シルバー・ラビリンス
この幻から解放されるには、迷宮を越えてラビリンスのところに辿り着かなきゃいけない。そのためには、この扉の向こうへ当然行く必要があるわけで。この扉の先がどうなっているかは、なぜか語られない。どういうわけか知らないけど、語ることはできないらしいのよ。
とにかく、行かないことには何も始まらない。そうなればこの幻は一生解けないんだから。幻はあんまり長い間見てると後遺症が残るって言うし、できれば早いうちに迷宮をクリアしたいところ。
そういうことだから、さっき声にびっくりして離したドアノブをもう一度握った。時計回りにひねって軽く押すと、音もなくその扉は開いた。
目の前に立っているはずなのに、その扉の向こうには何も見えない。部屋から光が入ってるはずだから、少しくらい見えてもいいはずなのに。まさしく、一寸先は闇状態。
でも、行かなきゃね。
私は意を決して一歩を踏み出した。
作品名:シルバー・ラビリンス 作家名:アリス・スターズ