とある学校の委員会は!
ホイッスルが鳴り響くと同時に不動がボールをあげて、サーブを打ち込んだ。
それはもう、素晴らしく凄まじいスピードのサーブを。
見事に音喜多の顔の間横をすり抜けたボールが痛々しい音を立てて、床に当たった音。
「「「無理!」」」
綺麗に重なった叫び。
棄権という道を選べるものなら、選びたい。
その心の叫びまでも、きっと綺麗に重なっただろう。
全員がそう思うものの、矢動丸という存在がきっとそうはさせない。
『楽しんでやればいいんだから、気にするな!』
いや、楽しいとかそういう次元かなり越えてると思うんですけど。
それが言えれば、苦労はしないんだが。
言えるわけもないし、言ったところでどうもならない。
サーブ権を決めるジャンケン負けてるあたりで終わってたんだ、と委員の誰かが呟いた。
「……ごめん、僕のせいだ」
わかってると思うけど、と付け加えて音喜多が呟き、乾いた笑いが起こる。
その乾いた笑いさえ止めたのは、二度目のサーブ。
結局、放送委員の顔面に痛々しくボールの跡が残り試合は終了した。
「観音寺君。これさ、やる意味あったのかな?」
「……楽しんでたから良いんじゃないですか、体育委員が」
顔面レシーブでかろうじて返したボール大喜びしてたくらいだし、と観音寺が鼻を押さえながら呟く。
1ポイント返すだとかいった無謀な試みは、あのサーブ直後に消えた。
代替案として『怪我をできるだけ少なく頑張りましょう』というのが出されたくらいである。
ちなみに、彼女はまだ無事な方である。
音喜多に至っては、かろうじて返したボールが凶器と言う名の矢動丸のアタックと化したものを顔面に受けたのだから。
「なんでさ、なんで彼らは部活動しないんだろう」
あれなら普通に狙えるでしょ、全国とかなんかそんなもの。
そしたら僕ら放送委員が応援放送とかしてさ、万々歳じゃないの、学校全体的に良い方向だと思うんだ。
わざわざ委員会してる意味がわからないよ、と保冷剤を顔に当てて呟く。
「……バレー部の顧問の先生呼んできて、引き抜かせてやります」
体育委員会じゃなくて超人委員会だっつの、と忌々しそうに言いながら観音寺は携帯をいじくる。
「あれだよね。レクだと思ってきたら、オリンピックでしたっていう勢いだよ、あれは」
「あはは、委員長たとえが上手ですね」
僕ら以外ほぼ普通じゃないものね。
作品名:とある学校の委員会は! 作家名:文殊(もんじゅ)