鬼と狐の宣戦布告
「んなっ! 面倒くさいとはなんじゃ! 妖弧が困っているというのに」
狐は、頬を赤らめて叫んだ。
要するに今の九尾の狐は絶世の美人な訳で、頬を赤らめたらどうなると思う?
そう、反則的なまでの破壊力を誇る。
今までに見たことがないくらい、味わったことのないくらいの破壊力。
「妖弧が困ってるって......俺に関係ないじゃん......」
俺は、迂闊ながらも目線を外して話してしまった。
実に、迂闊だった。
あまりにも隙だらけな表情を見せてしまった。
万単位の年月を生きた妖弧は一瞬で分かるだろう。
何せ、九尾の狐と言うのは絶世の美女に化けて男を騙す生き物なんだから。
「ん......? うぬよ、今、わらわのこと」
「思ってねぇよ」
即、遮断。
絶対に最後までは言わせはしない。言わせたくない。言われたくない。聞きた
くもない。クソ、平常心平常心。
「ま、そういうことにしてやろうかの」
ていうか今思ったんだけど、この妖孤、人間を喰ったんだよな?
貪っていたんだよな?
何で、俺はそんな奴と平然と喋っているんだ?
いかに一般の人よりも霊感もといカッコよく言って、霊能力があるからと言っ
て、何で人殺しの九尾の狐と戯れちゃってるんだ。俺は面倒くさがり屋なのに.
.....いつもなら即帰宅している所なのに。
何か惹かれるところがある。何か魅かれるところがある。興味が湧いて来てい
るんだろうか。そこら辺にいる雑魚みたいな妖怪ではなく、伝説の存在を前に。
少なからず心が躍っているんだろうか。柄でもなく、らしくもなく。
興味があるんだろうか。
妖怪に対してこうなったのは、初めてだ。