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鬼と狐の宣戦布告

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「うぬら、わらわをあまり怒らすでないぞ」
凛とした声が響いた。
俺は、その声の主の方向へ焦点を合わせた。
そこには月夜に照らされ妖艶な黒と化した髪を宿し、整い過ぎた顔立ち、百人が
百人『綺麗だ』と言う十代後半にも見える、『狐』がいた。
あぁ......言うのが遅くなって申し訳ないが、俺が助けようとしていたの
は女の子の方ではない、『男』の方だ。
だから気乗りしなかったんだよ。犯罪者を助けているみたいでさ。
「は?」
「うぬ? わらわ? こいつ馬鹿じゃね?」
「どこの時代の方なんだよ」
ゲスな男どもが笑った。豚のように醜く......いや、養豚所で解体待ちの
豚だな、これは。
助けようもない。助け甲斐もない。助ける意味すら見いだせない。
さようなら、また会うことはないだろうけど。だから、さようなら。
「消えよ、人の子らよ」
俺は、その言葉を聞いた瞬間目を背けた。
だって、人が喰われているところをまじまじと見たくないだろ?
そんなグロテスクなシーン、俺は描写しようなんてさらさら思わないんだよ。
ゴキ! ヌチャ! ベキ! ジュル! なんて効果音を聞いているだけで満足だ

ていうか、面倒くさいな、これから。マジで逃げようかな。
作品名:鬼と狐の宣戦布告 作家名:たし