顔 上巻
大川は擡げた頭を、ゆっくりと持ち上げた。
眠気のためにボンヤリとした頭を二度三度振ってみた。
小山は大川の態度にイラついたが、わからなくもなかった。
だが、眠気を払拭するには・・・。
小山が立ち上がって、大声で一之瀬の名を呼んだ。
「ったく手めェの、嘘っぱち聞いてりゃぁ眠くて仕方ねえんだよ!」
大川が、小山を制した。
大川も自らの眠気を恥じ、気持ちを切り替えた。
もう残り時間も少ない。
とりあえずヤツの口が開いただけでも
我々の勝利だ。最後に、ヤツに一泡吹かしてやろうか。
大川は、小山の言葉を遮った。
「んなぁ、おまえさん、ロザンナさんを愛していたって云ったよなぁ。」
あぁ、もちろん。
「じゃぁ、なんで逃げ回って、顔まで変えて。どうするつもりだったんだい?」
そりゃぁ、もちろん。ロザンナ殺したやつを見つけてって思うさ。
けど、そのまえにあんたたち警察から逃げなきゃ、
そうすることも出来ないじゃないさ。
「ロザンナさんを殺したヤツの目星ってあるのかい?」
いいや、ないけど。