顔 上巻
⑫二日目 #4
大川は、嬉々として話し続ける一之瀬の表情を見ていた。
完全にヤツの自慢話じゃないか。
それでいい。それでいいんだが。
どう考えたって。まともな話じゃない。
自由に顔面を意のままに変えられるというのか?
で、医者の代わりに手術をした?
医師法違反?そんなことのまえに・・まともな話じゃない。
しかも、頭の変な小学生みたいな空想というよりは妄想の類。
だが、大川は深呼吸してみた。
今の自分の取るべき態度は。自分に望まれていることとは。
今の自分に望まれているのは、ヤツに多くを語らせることだ。
なにかが作用すれば、ヤツは再びダンマリを決め込むだろう。
いまさら、自分になにを望まれることは無い。
ここはこのまま、ヤツに話をさせればいい。
_どうせあと数時間で役目は終わりだ。
_ドヤの飲み屋で、飲ませて・・・。
__酔いつぶれたところをさ。そいつの顔を貰ってしまえばいいんだ。
___そいつの顔になって。そいつの振りして。そいつの女抱いて。
____そいつの金で暮らせばよかった____。
なぁ、刑事さん、ちゃんと聞いてんのかよ?