顔 上巻
オレはさ。このオレは。ヤツのおかげで。
顔面を自在に変形できるようになった。
怪我の功名で。ヤツの顔面神経の手術の失敗が、オレ。
このオレを自由にしてくれた。
オレの顔は、二日ほど掛ければ、キムタクにもトム・クルーズにも
お笑いタレントにもなれる。多少の痛みは伴なうが・・。
オレの喜びようは、ヤツには奇異に思えたらしいが
ヤツもたいしたもんさ。開き直りやがって。
これは整形外科の革新だ、とか抜かしやがって。
学会に発表するとか、調子こいてやがって。
だからオレはさ。オレは、二之宮になることにした。
オレは二之宮のノッペリした顔になり、大学病院で医者になった。
あぁオレさ。オレは、曲がりなりにも医学部を出てたから。
手術なんて、オレの方が巧かったみたいだな。評判良かったもん。
けど、ヒトの目に晒されるのがイヤになったんだよな。
いつまでも二之宮を閉じ込めても置けなかったし。
だから・・
「殺したのか?」
だからぁ、オレ?オレは殺してないさ。
オレはさ。ヤツの元を離れて、ドヤに戻ったのさ。
って、アイツぅ~、死んだの?