顔 上巻
それで、オレ。闇医者に会ったんだ。
なんか日本語がおかしかったからな。大陸の医者じゃないか?
そういえば、客もヤクザ物か大陸系か。そんなところだったな。
名前も思い出せないけど。
兎に角、顔を変えたかったわけ。
で、目尻を・・オレ、目尻上がってたんだよ。
それをさ目尻下げて垂れ目でだらしない感じにしたかったわけ。
そしたらさ。そんな、ほんのプチ整形でも50 万程の金を要求してきた。
そういわれても。オレ。20万ぐらいしかもっていなかったしさ。
ヤツは顔を見る商売で。オレが誰だかすぐにピンと来たらしい。
だが、向こうも無資格の闇医者。互いに警察に通報することは無い。
オレはさ。値切ったの。
そしたら闇医者のヤツ、10 万値引く。といいだしたんで。
でも、山谷には、もういられないと思っていたから。
カネが無い。カネが作れない。といったら。
そしたら闇医者が、オレ、オレ向きの仕事があるっていうので。
仕事を紹介してやるって。
そのためオレ。オレはさ。ヤツの助手に連れられてさ。
大久保辺りの汚い安アパートの空き部屋を宛がわれて。
そこはいろんな言葉が混在した場所で。
片言の日本語で、聞き出したのは、彼らの多くは大陸から
不法にやってきて、日本人に成りすますため、闇医者によって
整形手術を施される・・・いわば、そこは待合室だった。