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顔 上巻

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 ⑦初日 #4


大川の席から右側の壁には大きな丸い時計が掛かっている。
左側のマジックミラーから狙っているんだろうビデオカメラから
映りがいい位置なんだろうな。大川はそんなことを思いながら
3 時8 分を示す時計の針を見ていた。

だからオレ。オレはさ。闇医者に行ったんだ。
新宿のホラ、花園神社のさ、向こう側みたいなところさ。
それまでの半年ほどで、オレの。オレのさ、体にガテンな匂いがさ。
染み付いちゃったんだろうな。

アノ辺、多いよね。女買いに来た労務者っていうかさ。
そういうオッサンたち。大勢に紛れれば、警官の前でも堂々と歩けたな。
それでさ、あの汚い雑居ビルに行ったんだ。
狭くてぼろいエレベーター乗ってさ。何階だったっけな。

薄暗い待合室に、スジ関係みたいなヤツばかり。
手配写真の奴ら、全員集合って感じでさ。
そうそう、闇医者の女房っていうのが、下の階で外科医・・
これも闇医者なんだろな。こっちは凄く混んでいた。

ちょうど、小指落としたヤクザが運ばれてきたのかな?
結構騒々しかったんだ。で、上のこっちのフロアは。
整形屋だった。診察室にいくまでの部屋には、包帯巻かれたヤツがさ。
寝ているのが見えた。二、三人だったかな。
作品名:顔 上巻 作家名:平岩隆