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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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夜桜お蝶~艶劇乱舞~

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 道行く人にお蝶は天狐組の居所を訊いて回った。すると賭場を構えていると教えられた。
 天の紋が入った戸の前に目つきの悪い男が立っている。その男はお蝶の姿を見た瞬間、腰が引けた。
「て、ててめぇは!」
 つい先ほど、お蝶にのされた男だ。
 戸の前から動けない男を軽く押し退け、戸口に手を掛けた。
 開いた戸の音は甲高く奥の部屋まで響いた。
 中に居た者は一斉に身構える。
 険悪な男たちとは違い、お蝶は柔和な笑みを浮かべた。
「あたしゃ喧嘩に来たんじゃありません。親分さんにお目通りを願いたく参上いたしやした」
 奥の部屋から煙管を吹かせた小太りの男が現れた。
「俺になんの用だいお譲ちゃん」
「こちらさんの子分が追っていた娘さん、可哀想に亡くなりやした」
「で、亡骸は?」
「はい、そちらの葛籠に……」
 お蝶が手向けた先で黒子は葛籠を開けた。
 葛籠の中から?立って入っていた?ように娘の亡骸は脇を抱きかかえられた。
 畳に寝かされた娘の表情は安らかだが、頬は酷くやつれてしまっている。
「随分とここの親分さんは遊女の扱いが手厚いようで……」
 と、皮肉って、周りの眼がきつくなったのを承知でお蝶は言葉を続ける。
「この娘さんがなぜ死んだのか、深い詮索はいたいやせん。ですが、せめて里親に知らせてやるのが筋ってものでしょう」
 お蝶の足元に小判が一枚投げられた。放ったのは親分だ。
「娘の亡骸は俺たちが預かろう。それは娘を届けてくれた駄賃だ、取っておきな」
「一両とは羽振が良いこって、ありがたく頂いておきやす」
 一両には運び賃の他に、口止め料や無駄な詮索をするなという意味が含まれているのだろう。
 懐に一両を仕舞ったお蝶は軽く頭を下げた。
「それではあたいはこれで失礼いたしやす」
 背を向けたお蝶を見ながら、親分は子分たちに顎をしゃくって合図をした。
 子分が抜いた切っ先がお蝶の背を襲う。
 誰かが呟く。
「懲りないお人たちで……」
 まるで背中に目があるように、お蝶は匕首をひらりと躱し、相手の手首を捻り上げた。
「いでででで……」
 呻く男の横でお蝶は艶笑を浮かべた。
 女の細腕でお蝶は掴んでいた男を、戸を破って通りの向こうまで投げ飛ばした。
 驚いて眼を剥いた親分にお蝶は再び軽く頭を下げた。
「失礼したしやす」
 着物の襟首を正しお蝶はこの場を後にしようとした。