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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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夜桜お蝶~艶劇乱舞~

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 地面では虫の息をした武士たちが苦しそうに呻いている。
「お代官様、残っていらっしゃるのは貴方様だけでございやすよ」
 挑発するお蝶に代官は笑った。
「虫けらどもを倒したくらいで粋がるな。お前の相手など儂独りで十分じゃ」
 地獄絵図を目の前にしながら、代官は臆することなく抜刀した。さすがは人の血を啜る怪物だけのことはある。
 今の二人の距離ならば、刀よりも妖糸の方が有利か?
 枯れ細った躰からは想像もできぬ瞬発力で、代官が縁側から大きく飛翔した。
 すかさずお蝶が妖糸を放つ。
 刀と妖糸が交じり合い、宙で火花が散った。
 弾かれたのは妖糸。
 切断された妖糸が氣を失い消滅する。
 お蝶は頭上に振り下ろされる刀を飛び退いて避け、続いて来た衝きを横に退いて躱した。だが、それを予期していたかのごとく、刀は薙ぎ払われお蝶の前を掠めた。
 三段攻撃を仕掛けた代官は息も切らせていない。枯れた躰は偽りとしか思えない。老人の皮を被ったなにかなのだ。
 乱れ繰り出される刀の舞を、お蝶はひらりひらりと、こちらも舞うように躱す。
 血でぬかるんだ地面に代官が足を取られた。
 見過ごすわけもなくお蝶は妖糸を放つも、それはいともあっさりと断ち切られてしまった。
「やはり糸が見えやすか?」
「面白い技を使う手足[テダ]れじゃな。しかし、儂には勝てぬ!」
 疾風のように刀が薙いだ。
 ひょいとお蝶は躱したが紙一重。刹那違えば真っ二つに胴を斬られていただろう。その証拠に、腹の着物が少し口を開いていた。
 飛び跳ねながら刀を躱すお蝶を代官は嘲笑う。
「兎のように飛び跳ねおって、逃げることしかできないのか?」
「物事には機というものがございやす。例えば今とか」
 会話に挿んで妖糸を放つも、呆気なく斬られてしまった。
「汚い真似をしおる」
「外道には外道。殺し合いは是が非でも勝たねばなりやせん。負けは死を意味しやすから」
「ならばお主に待っておるのは死じゃ」
「さて、それはどうでございやしょうか……」
 お蝶は網を引いた。
 ぬかるんだ地面に隠されていた網状の妖糸を一気に上げたのだ。
 罠に掛りそうになった代官の刀が冴える。
 高く飛翔した代官は下から襲い来る網を切り裂いた。
 しかし、不意を衝かれた為か斬り損じた。
 刀を握っていなかった腕が、肘から撥[ハネ]ねられた。