小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

夜桜お蝶~艶劇乱舞~

INDEX|39ページ/44ページ|

次のページ前のページ
 

「人間てのは本当に醜い生き物だねッ!」
 狐火が放たれ火のついた弥吉は両手を高く掲げ広げた。
 地獄の業火に焼かれながら、弥吉は奇声にも似た高笑いを発していた。
 裏切りを繰り返した弥吉は炎によって裁かれた。
 火は密集した家々にすぐに飛び火するだろう。
「本当に潮時のようだね」
 と、お紺は呟き、狐火を放った。
 もう手加減をする必要はない。ここは火の海に沈む。
 お紺はところ構わず狐火を放ち、あたりはまさに火の海に沈んだ。
 建物に囲まれた裏庭は、このままでは火の壁に囲まれることになるだろう。
 炎を後ろにしてお紺は艶やかに微笑んだ。
「尻尾を巻いて逃げさせてもらおうかね」
 金色の尻尾を揺らし、燃え盛る女郎屋に消えていくお紺の影。
 その後を追ってお蝶は火の中に飛び込もうとしたが、屋根が崩れ落ち行く手を塞いでしまった。
 気付けば女郎屋以外の建物も燃え盛っている。
 熱風が吹いた。
「さて、どうしたもんか……」
 お蝶は辺りを見回しながら呟いた。
 目が留まった。
 お蝶も黒子も二階の屋根を見上げていた。
 煌きが屋根に向かって放たれる。
 不可視の妖糸を屋根に固定し、葛籠を背負った黒子を、さらにお蝶が黒子を背負う。
「屋根が崩れないことを祈るのみだね」
 そして、お蝶は軽やかな動きで屋根に登りはじめた。
 夜更け、代官は寝室の襖を開けた。
 すると敷かれた布団の横に、背を向けて座る女の姿があるではないか?
「何者じゃ?」
 尋ねた代官に女は背を向けたまま答える。
「わたしのことをお忘れでございますか?」
 ゆらりと立ち上がり、女は勢いをつけて振り向いた、その顔は般若の面。二本の角を生やし、恐ろしいまでに憤怒した般若面であった。
 代官は一瞬怯みながらも、威勢をつけて女に飛び掛った。
「誰の悪戯じゃ!」
 鷲掴みにした代官の手が般若面を剥ぎ取る。
 その下から現れた顔を見て代官はカッ開いた眼を剥いた。
 数日も前に抱いた女ならば忘れていたかもしれない。けれど、この顔は忘れるはずもない。
 ――お千代だった。
 そんな筈はない。確かに血を啜り、事切れた筈だ。
「儂が殺した筈……いや、絶対に殺した」
「では、ここにいるわたしは何者でございましょう?」
「幻影に決まっておる」
「なぜそう思うのですか?」
「桜の木の下に殺して埋めた!」