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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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夜桜お蝶~艶劇乱舞~

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 今宵のお紺は嵐よりも激しく荒れ狂いたい気分だった。
「どいつもこいつも……」
 しかし、お紺は理性で怒りを沈めた。
 敵の正体が知れないうちは下手に動かないほうがいい。
 いや、正体には心当たりがあった。
 知りたいのは目的だ。目の届くところで自由に泳がせたが、今ひとつ相手の目的がはっきりとしていなかった。
 そして、お紺は不気味にほくそえんだ。

 嵐の過ぎ去った翌朝は雲ひとつない快晴で、夏が戻ってきたように朝から気温が高かった。
 女郎屋ではまた女郎がひとり消えたと、噂にするまでもなく女郎の間に広まっていた。
 足抜けした女郎がいても、探す時と探さない時がある。
 天狐組み若い衆が探しに出ている様子を見ると、?本当?に逃げ出したようだ。
 いつもよりも張り詰めた空気なのは、まだ帰ってこない者がいるためだろう。唯一帰ってきた片耳の男も、一睡もせずに正気を取り戻していない。まだなにが起きたのかわからず仕舞いだった。
 女郎の世話役の弥吉はお千代の見張りを命じられていた。これ以上、印をつけられた者に逃げられるわけにはいかない。けれど、お千代に逃げる気などない。
 狭いふとん部屋で弥吉はお千代に詰め寄った。
「逃げてくれ!」
「嫌よ、わたしは逃げない」
「どうしてだよ!」
「姉さんを見つけるまで逃げない!」
 お千代の決意は固い。弥吉の想いもそれに負けないほどだった。
「お千佳はおれが見つける……おれとお千佳は恋仲だったんだ……」
 思わず目と口を丸くするお千代。
 弥吉は村を飛び出す前から、幼馴染のお千佳に惚れていた。村を飛び出し、やくざになってからも、度々村にいるお千佳へ想い耽っていた。
 そのお千佳と女郎屋で再会した弥吉は、今までの想いが爆発した。お千代のほうも、放り込まれた地獄の中で、弥吉のことを頼りにしているうちに気持ちが揺れ動き、成り行きのままに自然と二人は男女の仲となった。
 しかし、二人の仲はご法度。
 女郎の世話を任されている弥吉が、売り物に手を出したことが知れれば、どんな仕置きが待っているか、お紺の性格を考えるだけで恐ろしい。
 そのため二人の恋は密やかに育まれた。
 弥吉はやくざから足を洗い、お千佳も足抜けをしようと、そう考えていた矢先だった。
 お千佳の首筋に青い痣が付いた。