まおー転生
俊足でホークアイは駆け、二刀流を振るった。
ガシッ!
ハルキは紙一重で一刀を真剣白羽取りで受けた。
しかし、刀は二振り。
ギシッ!
な、なんとハルキは刀を歯で挟んで受けた!?
「むうぃっふぁふぁ、ひひょふぉふぉふぁんふぁふぁひふぇふふぉひひ、ふふぁふぃふぇふぁひふぁひふぁぐーどぅ!」(日本語訳:昔、いとことチャンバラしてるときに、二人で編み出したんだ!)
別にどーでもいいエピソードだ。
ホークアイは足を蹴り上げた。
キン・タマ!
強烈な痛みでハルキは股間を押さえながら飛び上がった。
「いでーぢぬー!」
股間を押さえて床をゴロゴロ。
容赦ないホークアイの刀はハルキを串刺しにしようと振り下ろされる。
「覇道くん危ない!」
夏希の叫びを聞いて我に返ったハルキは、ゴロゴロしながら刀を避ける避ける。
「ぎゃっ、うぇっ、うおっ、刺さったら死ぬだろー!」
「そのつもりでやっているよ」
「手加減しろよバーカ!」
「するわけないだ……ろっ!」
一気に振り下ろした刀が床に刺さった。
その隙に立ち上がったハルキに頭をもう一振りの刀が掠めた。
よかったね、ハルキくん散髪代が浮いたよ!
「うぉ〜オレ様の髪の毛がーッ!」
まるでカッパみたい。
ハルキは床に落ちた髪の毛をかき集める。
「もったないもったいない!」
「君を相手にするのが馬鹿らしく思えてきたよ。バイバイ」
髪の毛を拾っているハルキの背後からホークアイの刀が振り下ろされる。
夏希が叫ぶ。
「やめて!」
ホークアイの動きが急停止した。
〈千里眼〉を持つはずの彼が今の今まで感知できなかった。
「……そこにいるのは誰だ!」
ホークアイが叫んだ。
長身のスラリとした影が長い髪を靡かせ入ってくる。
その姿を確認した夏希が叫んだ。
「舞桜ちゃん!」
そして、再度確認して呟く。
「……違う」
紅い髪が靡く。
舞桜と同じ顔を持つ者。しかし髪は紅に燃えている。
金色に輝く瞳でその者はホークアイを見据えた。
「我が城の居心地はどうだったかね? そろそろ私に返してくれるとありがたい」
その者の顔には歌舞伎の隈取りのような、目の回りや頬などに紅の線が入っていた。
ホークアイも思わず聞いてしまった。
「誰だ?」
――と。
「私か? 名は無い。ただ、いつの日からか……〈魔王〉と呼ばれていた」
作品名:まおー転生 作家名:秋月あきら(秋月瑛)