まおー転生
狐面が虚しい音を立てて床に転がった。
二人して床に倒れ、上に乗った夏希に見つめられた菊乃は顔を横に逸らした。
夏希の涙が菊乃の頬に落ちた。
「泣いてるの……菊乃ちゃん?」
菊乃もまた泣いていた。
「だってこうするしかなかったのよ……貴女と彼の間に挟まれたわたしは……道を失った」
「どうして?」
「貴女は扉の先に進みなさい。わたしはここで待つ……次に出てくる人を待って……だってわたしには選べないから」
「……わかった」
ゆっくりと夏希は立ち上がって、扉の前まで移動した。
そして、振り返る。
「あたしたち今でも友達だよね?」
「……貴女がそう思ってくれるなら」
「うん」
所々傷む体で夏希は重い扉を力一杯に開いたのだった。
部屋の中央で輝きを放つクリスタルの光。
蒼い海の中のような光に包まれるその場所で、目元だけを隠すマスカレードマスクの男が独りで佇んでいた。
「入ってこられるとは思ってなかったよ。魅神も変わってしまったものだよ、君のせいで」
顔は隠してもいてもその声には聞き覚えがあった。
「鷹山くん!?(どうして、どういうことなの……だって鷹山くんは……)」
「顔を隠していてもすぐにバレてしまったね。別にこれは正体を隠す物ではないからいいけどね。そう、俺は君の知っている鷹山雪弥――でも今は秘密結社C∴C∴(クリムゾンクロニクル)の首領として、ホークアイと呼んで貰えると嬉しいな」
「なにがどうなってるかわからないよ!」
ホークアイはため息をも漏らした。
「理解力のない女だなぁ。はじめからこの学園を乗っ取る気だったんだよ。活動の拠点とするために要塞も欲しかったし、なによりこれが欲しかったんだ」
親指を立てて、自分の後ろにあるクリスタルを示した。その大きさはホークアイの身長よりもある巨大な物だった。
クリスタルの入った透明な筒にホークアイは手を触れた。
「これはね、マナクリスタルと言って純粋なエネルギー結晶なんだ。上手く使えれば世界だって滅ぼせると思うよ」
「いったい何をしようとしてるの?」
「今言ったじゃないか、滅ぼすってさ」
邪悪な口元。
何を信じていいのかわからなくなる。
何が起きているのかさえわからなくなる。
「菊乃ちゃんもあなたの仲間だったの?」
「知りたいの?」
嫌な言い方だった。まるであざけるような物言い。
「教えて」
作品名:まおー転生 作家名:秋月あきら(秋月瑛)