まおー転生
名乗り出た。
しかし、雪弥は首を横に振った。
「僕一人で十分だよ。仕事は一人の方が楽なんだ」
ますます夏希は雪弥のことがわからなかった。
「(いったい鷹山くんって何者なんだろ?)」
本業とはいったいなにで、学生以外になにをしている人なのだろうか?
少なくとも断片的な言葉から普通のことではないことはわかる。
作戦や会議の最終的な決定権は舞桜にある。
「うむ、では潜入作戦は鷹山に一任しよう。残る我々は市民の安全確保、敵襲の備え、そして出撃の準備をする」
最後の言葉に驚いた夏希が声を荒げる。
「出撃って!?」
「敵を攻撃するために出動することに決まっておろう」
辞書的な言葉の意味を訊いているのではなくって。
「あたしも行くの?」
「案ずるな、私が守ってやる」
守るくらいなら最初から連れてくなって話である。
狐面の菊乃は表情が読み取れない。
ハルキは張り切っていた。
「よっしゃーついにオレ様が英雄となる日がやってきたぜ!」
このノリについていけない夏希はドッとため息を吐いた。
生徒会室のドアが開いて爆乳――もとい、ベルが飛び込んできた。
「グッドイブニング、エブリバディ! そろそろアタクシの出番かと思って来てやったわよぉん!」
とりあえず呼んではいません。
ベルは白衣のポケットから割引券を…・・・出すのをやめて、馬券……でもなくて、
「あったわ、コレコレ」
まずは小型通信機(発信器付き)、次に拳銃と実弾、手榴弾、プラスチック爆弾。
最後に胸の谷間から栄養ドリンクを出した。
「敵地に殴り込みするなら全部持って行きなさぁい、頑張るのユッキー!」
とは言われたものの、雪弥が手を伸ばしたのは通信機だけ。
「これだけで大丈夫です」
「そんなこと言わないでコレだけでも持って行きなさい」
と、雪弥の手に握らせたのはバナナ。
「おやつですか?」
思わず雪弥は尋ねてしまった。
「違うわよぉん、お夜食に決まってるじゃなぁ〜い♪」
あんたがバナナ握って『夜食』とかいうと別の意味に聞こえます。
口元から垂れそうになったヨダレを拭きながら、ハルキがうらやましそうな顔をしていた。
「遠足にバナナ持たせてもらえるなんててめぇ幸せもんだな!(チクショーオレ様もバナナ食いてえ)」
遠足じゃありません。
ベルは突然雪弥の腕に抱きついた。
作品名:まおー転生 作家名:秋月あきら(秋月瑛)