まおー転生
「おほほほ、設計ミスでトイレ作るの忘れちゃったのよぉん♪」
話を聞いて夏希はドッと疲れた。なんだかいろいろ怖い思いして損した気分だ。
ソファを進められた夏希もちょことんと座る。気付けば目の前のローテーブルに紅茶とケーキが出されていた。いつも思うのだが、舞桜の刀にしても、ベルが出すアイテムしても、どうやって持ち歩いているのだろうか?
そう言えば、舞桜はベルに用事があるとかって話だったような気がする。大切な話のようだったのだが……どう見ても団らんです。
しかし、あえて夏希はここで尋ねてみる。
「ここでなにしてたんですか?」
ベルは舞桜と顔を見合わせ、頷いた舞桜が口を開いた。
「私が開発を命じた月面探査用のロケットが打ち上げ直後に爆破されたのだ。実に見事なロケット花火として晴天の空に輝いたらしい。そして、乗員一名の命が失われてしまったのだ」
事故ではなく爆破とは穏やかではない。しかも死傷者まで出てしまうとは。
さらに舞桜が補足。
「加えて言うならば、死亡した乗員というのは夏希を人質にしたコンビニ引きこもり犯だ。遠くに逃がしてくれとの約束だったのでな、望みを叶えてやろうと思ったのだが、残念だ」
逃がすというかスケールの大きな島流し。
さらに夏希は質問を投げかける。
「爆破ってことは犯人がいるんだよね?(舞桜ちゃんのいつもの妄想じゃなければ)」
「うむ、私は光の勇者説を押しているのだが、ベルは違う見解を持っているらしい」
今日はワインのベルに視線が注がれる。
「アタクシはUSAか宇宙人の仕業だと思ってるのよねぇん」
「USAってアメ――」
「それ以上言っちゃダメよぉん、ライフを狙われたくないでしょう?」
仕切り直して夏希は尋ねる。
「どうしてUSAの仕業だと思ってるんですか?」
「だって月面にほかの国が着陸なんてされたら、チョコレート計画がウソだったってバレるじゃないの」
「宇宙人っていうのは?」
「ムーンにはウサ耳宇宙人の前線基地があるのよぉん。ロケットがよく花火になるのはほとんど彼らの仕業ねぇん」
ふ〜ん。なんかリアクションに困る話だ。
落ち着こうと思って夏希が紅茶を噴くんだ瞬間、けたたましいサイレンが響いた。いきなりの出来事に夏希の口からブフォーッした紅茶。
「な、なにっ!?」
作品名:まおー転生 作家名:秋月あきら(秋月瑛)