まおー転生
だけど何も見つからない!
いや、そんなハズはないのだ……なぜならトリックなのだから。
どこかに、どこかに必ずやトリックがあるのだ!
夏希はとりあえずトイレの水を流してみた。
大量の水が渦を巻いて便器の中に飲み込まれていく。
やっぱりなにも起きない!
でもここでめげる夏希ではないのだ!
まだ万策が尽きたわけではない。今流した水は『大』だ。まだ『小』が残っているではないか!
というわけで、水を流そうとしたのだが――水がでない。
「あれぇ?」
不思議に思いながら、なんとな〜く便器に腰をかけた瞬間、床に穴が開いて便器ごと落ちた。
落ちたというのは正しくない。
それはまるでジェットコースターであった。
真っ暗な空間を便器に乗ってレールの上を爆走する。
右へ左へ激しく体が動く。
シートベルトなんてありません!
ガクン!
急停車して夏希の体が前へ放り出された。
「いった〜いし、スカートが……(トイレの水で濡れた)」
ヤナ感じだ。
夏希の目の前には扉があった。プレートが付いていて『ヒミツ♪』と書かれている。いかにも怪しい。
ほかに進む道もないのでとりあえず扉を開けてみた。
「なにここ?」
どこにでもありそうなマンションの一室。今立っているのが玄関。廊下が奥の部屋まで伸びている。
とりあえずクツを脱いで上がってみる。
なにやら奥の部屋から話し声が聞こえる。
そ〜っと部屋の中を覗いてみると――。
「あ、舞桜ちゃんと鈴鳴先生」
だった。
リビングで寛ぐ二人の姿。美味しそうなケーキまである。
舞桜は特に驚いたよ様子もなく、
「どうしたのだこんなところにまで?」
「どうしたって言われても……」
困る。
ベルはというと、少し困った表情をしていた。
「あらぁん、バレちゃったのねぇん、アタクシのシークレットハウス。トイレのトリックのよくわかったわね」
ということは、トイレで聞こえたあの女の声も?
「あのうめき声って鈴鳴先生だったんですか?」
「うめき声?」
「トイレの中から聞こえたんですけど」
「ああ、トゥデイも出なかったのよね、ウンチちゃん。便秘でお腹がパンパンに腫れちゃって、アタクシのナイスバディが台無しだわぁ〜ん」
「そうですか……。別にあの場所のトイレじゃなくてここですれば?(変なウワサとかにならないのに)」
作品名:まおー転生 作家名:秋月あきら(秋月瑛)