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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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まおー転生

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 夏希が固まっていると、しばらくして『ジャ〜ッ』という水の流れる音がした。
 それを聞いた夏希はさらに凍り付いた。
 音が聞こえたトイレには『故障中』の張り紙が貼ってあったのだ。つまり開かずのトイレということになる。
 人間というのは怖いモノを目の当たりにすると、目が離せなくなったりするものだ。
「(逃げようとして後ろを向いた瞬間、殺されるってことも……怖ひぃ〜)」
 そうだ、森でクマに出遭ったときの対処法も同じで、相手から目を離さずに後退るのが正しい。基本的に猛獣と『こんにちわ♪』してしまったら、眼を離さないのが一番なのだ。
 まあ、相手が一匹じゃなくて、何匹もいたら眼なんて見てらんないから死(アウト)だけどねっ♪
 何を思ったのか夏希は果敢にも恐怖と立ち向かった。
 そろりそろりと張り紙のある個室に近づく。
 一番目の個室、二番目の個室を通り越し、三番目の個室の前で止まる。
 ノックをしようとして、やっぱり手を止めた。
「(バレたら殺されるかも)」
 なのでそーっと息を潜めながら、しゃがんでドアの下にある隙間から中を覗いた。
 ……足がない。
 しかしまだトイレのタンクに水を溜める音がしている。
 トイレは洋室である。便器に足を乗せている可能性だって捨てきれない。
 夏希は意を決してドアをノックした――瞬間!
「開いちゃった」
 ノックの反動でスーッとドアが開いてしまった。
 しかも中には誰もいない。
 謎の女のうめき声。流れたトイレの水。誰もいない個室。
 まさにイリュージョンだ!
 謎の女、トイレからの救急脱出スペシャル!
 一気に血の気の引いた夏希。
 だったら最初から見なきゃいいのに……。
 夏希はトイレから爆走しようとしたが思いとどまった。なぜならここで逃げ出したら、超常現象を認めることになってしまうからだ!
「トリックがあるに決まってる!」
 目の前でどんなモノを見ても『トリックだ!』と言い張れば心強い。精神状態も保たれてパニックにならずに済む。すばらしい魔法の言葉なのだ!
 こうなったら徹底的にやるしかない。絶対にタネと仕掛けを見つけ出さねばならない。なぜならこれはトリックなのだから、トリックでなければならいのだから。
 意地なった夏希は個室をくまなく探し回る。
 便器の中、タンクの中、女の子のトイレには必ず置いてあるブラックボックス。