まおー転生
「そ、それは勇者育成ゲーム! またの名をRPGではないか!? クソっ、こんなところにまで光の勇者の魔の手が伸びていたとは……」
この展開に置いてけぼりを食って独りポカーンとしてしまっている夏希。
「(やっぱりあたしこの人たちのノリについていけない)」
仕方がないので夏希は独り寂しく電源の入っていたパソコンを操作してみる。
どうやらブログをやっているらしく、記事を執筆中だったらしい。
【執筆中の記事】
タイトル:そういうやつらっているよな〜
話題になってないときに散々バカにしてたクセにさ、
なんか話題になったらファンみたいにしゃべりだすやつウザイな。
【数日前の記事】
タイトル:オッパピー
そんなの関係ねぇ!
そんなの関係ねぇ!
【もっと数日前の記事】
[自主規制]って誰?
なんかみんな記事にしてるから気になったんだけど?
【さらにその記事のコメント】
[本人]
んで、そいつがどうしたのさ
そこまで騒ぐくらいなら 何 か あ る ん だ ろ う ね ?
[HN自主規制]
最近[自主規制]って番組に出てて売れてるらしいですよ。
[本人]
そんなゴミ番組見ない。
記事を流し読みした夏希の感想、
「(この人イタイ)」
ベルも近づいてきてほかの日の記事を読みはじめた。
「なんだかヘアワックスのトークが多いわね。この部屋の住人が?」
言われて夏希も部屋を見回した。
ファッションに気を使うような住人の部屋とは思えない。マンガやフィギュアにアニメのポスターが点在している。ほかに置いてある家具や小物は地味な物ばかり。
さらに驚いたのがなぜか置いてある香水。
ベルがツッコミを入れる。
「ヒッキーなのに?」
ヘアワックスもそうだが、いったいどこにつけていくのだろうか……引きこもりなのに。
さらに別の日の記事では精神論を語ってみたり、哲学を語ってみたり、宇宙のことを語ってみたり、思想家ぶってる印象も受けた。
ベルは深く頷いた。
「この患者は中二病にも感染しているわね」
中二病とはジャパンの中学二年生くらいの青少年によく見られる症状で、子供と大人の狭間で揺れ動く心情が隔たったり歪んだ形で現れるものである。
作品名:まおー転生 作家名:秋月あきら(秋月瑛)