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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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まおー転生

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「痛いけど大丈夫……だって菊乃ちゃんのほうが苦しそうなんだもん」
《やめて同情なんて、この偽善者!》
 物の怪は怯えるように後ずさりをした。
 ゆっくりと一歩一歩、地面を踏みしめながら夏希は近づいた。
《来ないで……来ないでよ……わたしに触ると毒に犯されて死ぬわよ!》
「大丈夫だから」
 大きく両手を広げた夏希は包み込むように物の怪の長い手にしがみついた。
「ね、だいじょぶだったでしょ?」
 汚泥に手を突っ込んでいるような触感。
 鼻を麻痺させ頭痛と眩暈を引き起こす異臭。
 毒なのだろうか、皮膚が燃えるように熱く、痺れるような痛みが全身に走る。
 しかし、それらは徐々に薄まって逝こうとしていた。
《あなたは言葉も態度も心も、馬鹿みたいに嘘のつけない人。貴女の心はとても聞こえやすかった。だから気付いていたのに、信じることができなかった……だって人は裏切るものだから、ごめんなさい》
「うん」
《これはわたしの身に降りかかった呪なの。わたしは生まれて間もなく物の怪に躰を奪われた。お父様とお母様はわたしを助けようとしてくれた……そんなことしなくてよかったのに。物の怪は死んだわ、けれど引き替えにお父様も死に、お母様は未だに臓腑に重い後遺症が出ているの。そして、わたしはと言うと、物の怪の意識は死んでも怨念だけが残ってしまった。故に満月の晩や霊力や魔力の類を多く孕んだ場所にいると、こんな醜くて気持ちの悪い物の怪になってしまう》
 空には満月が浮かび、優しい月明かりは二人の少女を照らしていた。
 夏希の膝の上で眠る菊乃の姿。
 気高く上品で華やかな少女の素顔。それを見て夏希は息を呑んだ。
「(ちょー美人)」
「嘘付かないで」
「ウソじゃないよ、なんでこんな美人なのに顔隠すの!」
「美人じゃないわよ、わたしは不細工なの」
「顔じゃなくて性格がブスなんでしょ!」
「……っ」
 思わず瞳を丸くして言葉を詰まらせる菊乃。
 互いに見つめ合い。
 急に可笑しくなって夏希が笑った。
「あははは、なんかわかんなけどおかしいー!」
 釣られて菊乃も口から空気を漏らした。
「ふふ、あはは……」
「あーっ菊乃ちゃんが笑った! いつもみたいのじゃなくて、菊乃ちゃんのその笑顔スゴイ素敵!」
「うるさい」
 ブスッとした表情をしても、口元だけは微笑みを浮かべていた。