まおー転生
このままでは重症患者が一名緊急輸送されてしまう――と思った刹那、どこからともなく現れたピンクの影がライトに飛び蹴りを炸裂させた。
リンゴ大好きニュートンが唱えた〈運動の三法則〉に則って、舞桜の頭上に落ちるハズだったライトは軌道を変え、強い力で蹴られたため遠くまでぶっ飛んで逝った。
舞桜は何事もなかったようにメガホンを手に取っていた。
「このあと、ペンギン村で活躍した前総理大臣の挨拶などを予定していたが、皆もそろそろ退屈してきたころだろう」
ひとり前のアベ・ハートではないのは、やはり人気の問題だろうか。
というか、ハプニングが続いて退屈なんてしてられませんが?
と言いますか、ピンクの影はノータッチ?
「予定をすべてキャンセルして、私の権限で入学式を終わりにする」
すでに過半数が舞桜の発言についていけてない。
「それでは、これより第一回エクストリーム生徒会選挙を開催する!」
唐突な開催宣言に一〇パーセントの生徒もついていけていないだろう。内閣だったら不信任案を出されても仕方がないパーセンテージだ。
「ルールは至って簡単だ。いち早くゴールにたどり着いた上位五名が一位から順に、会長、副会長、書記二名、会計に任命される」
何か大事な説明が欠落してませんでしょうか?
暴走して話し続ける舞桜を止める者はいなかった。だってここで一番偉いんだもん。
「すでにレースに参加する一〇一名は選抜されている。もちろん、それ以外の者も参加を認めよう。しかし、選抜された諸君らは強制参加である。正当な理由なくレースを辞退した場合は、学園中の便所掃除一年間というペナルティが待っているので心しろ。なお、生徒会役員になった者は三年間の学費免除、さらに会長になった者には、私の力でどんな願いも一つだけ叶えてやろう!」
生徒会選挙ですよね?
民主主義に則って投票方式ではないのですか?
ここは独裁国家なのでしょうか?
そんなわけで第一回エクストリーム生徒会選挙が幕を開けたのだった。
てゆーか、本当にピンクの影はスルー?
入学式のあと、生徒たちは決められた教室へと移動した。ここでクラスメートと初顔合わせだ。
一年A組の教室に入った夏希はほっと胸をなで下ろした。
なんだか普通だ。
作品名:まおー転生 作家名:秋月あきら(秋月瑛)