まおー転生
「生徒会室ってシャワー完備じゃなかったかしらぁん? お湯でないけど」
ベルはこんな調子だし、なんだかいつも気の張っている舞桜だが、今はとても安らかな表情をしていた。
「まあ良いではないか、たまにはゆっくりと骨を休めるのも」
「そうそう、今日はパーッと飲んで盛り上がりましょう!」
胸の谷間から取り出された一升瓶。すでに空の瓶が畳の上に転がっている。いったいアンタ何本胸に挟んでるんだよ。
そんなわけではじまったお泊まりパーティ。
時間は楽しく過ぎていき、執拗なまでの[いやぁン♪]トークや[自主規制]トークでベルが夏希を責める。
そして、ついに夏希がキレた。
「あたし帰ります!」
どうやら楽しかったのは酔っぱらいのベルだけだったらしい。
夏希はドアをこじ開けようとするがビクともしない。
蹴る蹴る蹴る!
足が痛くなっただけだった。
「だからインポッシブルって言ってるじゃなぁ〜い♪」
「あたし絶対に帰りますから!」
意地になる夏希。
でも開かないドア。
瞑想していた舞桜がすっと立ち上がって刀を抜いた。
「夏希がそこまで出たいというのなら仕方がない。斬るから下がっていてくれ」
一刀が輝線を描いた。
刹那、斜め十文字に入った線からドアが崩れ落ちたのだった。
驚いたのはベルだ。
「絶対斬れないと思ったのに(やっぱり侮れないわね、魔王ちゃん)」
「我が刀に斬れぬ物なし……こんにゃく以外は」
諸事情によりスルーします。
ベルは白衣から筒状の何かを取り出して、夏希に向かって軽く投げた。
「受け取りなさい、懐中電灯よぉん」
ロウソクのほかにもまともなアイテム持ってたのか……。
「あ、ありがとうございます(あの人なんでも持ってるんだなぁ)」
こうしてやっと生徒会室を脱出できたのだが、本当の難問はこのあとに待ち受けていた。
廊下が暗い。
すでに時間も夜だから、外が暗いのは当然だろう。窓から見える景色も月明かり……窓がねぇ!
舞桜は一人で納得。
「事態は思いのほか悪かったらしい」
「どういうこと?」
「停電の拍子に防御システムが誤作動して、窓がすべて塞がれてしまったらしい。もちろん野外に出ることができる扉もすべてだ」
つまり早い話が閉じこめられたって話ですね。
さっきまでと状況変らねぇ!!
「外に出る方法ないの?」
尋ねる夏希に、
「知らん」
作品名:まおー転生 作家名:秋月あきら(秋月瑛)