まおー転生
廊下の向こうからバカが……じゃなくて、バカデカイ声で叫んだハルキ。
夏希は不思議な顔をした。
「邪道くんがエクストリームスポーツの達人?(なんの?)」
邪道じゃなくて覇道です。
雪弥が説明してくれた。
「彼はエクストリーム借金、リアル鬼ごっこ、リアルかくれんぼ、そしてエクストリーム貧乏の達人だよ」
どれもあまり楽しそうじゃない競技だ。むしろ好んでやりたくない。
「貧乏で悪かったなこのブルジョワどもめ!」
ハルキは怒った様子で近づいてきた。
「お前らに貧乏の苦しさがわかってたまるか。誕生日プレゼントにもらった一〇円ガムを、大事に一週間かみ続けてたのに、ある日起きたら髪の毛にくっついてた苦しみがお前らにわかるのか!」
わかんねーよ。ガムなんて一日ですら噛んでらんねーよ。K県在住のししゃもにゃんは同じガムを六時間くらいなら噛んでられるらしいがなっ!
勝手に雪弥はハルキ家の借金事情を話しはじめた。
「彼の一族は膨大な借金を抱えていてね。噂では小さな国くらいの国家予算は超えるとかで、返す目処なんてないらしいよ。彼も相当な達人だけど、もっとすごいの本家の長男に生まれた彼のいとこさ」
ハルキとは昔からの知り合いらしい舞桜だが、初耳だったことがあった。
「ほぅ、お前にいとこがいたとは初耳だ」
「いちゃ悪いかよ。本家に関わると厄介だから最近は会ってねえけど、あいつはオレ様のライバルだから会いたくもねーよ」
「ふむ、ライバルとはなんだ?」
「オレ様の夢は勇者になること、あいつの夢は魔王になることなんだと」
舞桜は微笑んだ。
「なかなか面白い、魔王とな。そいつの名前は?」
「覇道ヒイロだよ」
「覚えておこう(ヒーローなのに魔王を目指しているのか。真物(ほんもの)ならいつか会うことがあるかもしれないな)」
勇者とか魔王とか魔王とか、なんですか人気職業なんですか?
あまりにも目指している者の数が高くありません?
そうそう、そう言えば新しい部活がどうかって話はどこ行ったんですかハルキさん?
「おっ、忘れるとこだったぜ。オレ様新しい部活作ったからな、名付けてアンチ舞桜部だ!」
敵対対象を名指しですか(笑)
舞桜はクルッと背を向けて歩き出した。
「さて、部活の視察をせねばな」
「おいコラッ、逃げんのかバカ野郎!」
作品名:まおー転生 作家名:秋月あきら(秋月瑛)