まおー転生
顔面蒼白になったハルキは焦って飛び退いた。
「いでーっ、てめぇ殺す気かっ、覚えてろよバーカバーカばか!」
赤い液体をぴゅーっとしながら、心の汗を流すハルキは部屋を逃げ出していった。
ハルキが出て行ったあと、雪弥が仕方なさそうに、
「出て行っちゃったね、ハルキ」
「うむ、ゴリ子さんにフラれたくらいで情けない」
事務的に舞桜が答えた。
そう言えばあんなにもハルキにご執心だったゴリ子さん、今はバナナが恋人らしい。
バナナのほうが立派そうだもんね!(何が?)
舞桜の『部費はいくらでも出してやる』発言を受けて、生徒たちは部活の新設に躍起になっていた。
どんな部活動でも舞桜は認める方針だが、ただし帰宅部に関しては部費の支給をするべきか論議の最中だ。
そんなわけだから、ありとあらゆる部活動が展開されることとなった。
今日はそんな数々の部活を視察することになっている。
二手くらいに分かれて、山のようにある部活を回ろうとなったのだが、ゴリ子さんはバナナに夢中で言うことを聞いてくれないし、菊乃は雪弥と回ることを拒否して、三手に分かれることになった。
もちろん夏希は半強制的に舞桜と回ることになってしまった。
学園生活がはじまって数日、夏希の近くにはいつも舞桜がいる。いくら夏希が逃げても追ってくるし見つかる。疲れ切ってそろそろ逃げる気力もなくなってきた。
しかし、夏希はどーしても舞桜から離れたかった。
なぜって、そりゃ〜命の危険を感じるからに決まってるじゃありませんか!
今のところ直接的な暴力や嫌がらせは受けていない。が、舞桜と一緒にいると、いつもどこからか殺意の眼差しで見られてしまうのだ。きっと舞桜の熱狂的なファンに違いない。
そう、夏希は嫉妬の嵐に晒されているのだ。
舞桜と一緒にいなければそんなことにならないで済むだろうか?
いや、たぶん無理だろう。
舞桜が夏希のことを想っている限り、いくら距離を置いていても嫉妬される。むしろ舞桜から離れた瞬間に刺されかねない。なんだかんだ言って、舞桜の近くにいたほうがファンは抑制されるので安全なのだ。
舞桜は部活のリストを開いた。
「ふむ、まずはどの部活から視察をするか?」
横からリストを覗き込む夏希。
「う〜んっと(何コレ、まともな部活がない)」
作品名:まおー転生 作家名:秋月あきら(秋月瑛)