まおー転生
夏希は菊乃と雪弥に視線を送った。先に口を開いたのは雪弥だった。
「僕の名前は鷹山雪弥。みんなと仕事ができて楽しく思ってるよ。魅神とは同じ中学だったんだ、三年連続で同じクラスで……な、魅神?」
「…………」
狐面は目を伏せるるよう下に向けられた。
いっこうにしゃべろうとしない菊乃に変わって雪弥が話し出す。
「彼女の名前は魅神菊乃。実は僕の――」
ドン!
急に菊乃がテーブルに両手を叩きつけた。
明らかに怒りが見えた。
鷹山は口をつぐんで、しばらく間を置いてから横に視線を向けた。
「次はゴリラさんの番だよね?」
茶の間にゴリラ。バナナを美味しそうに食べていた。
夢中でバナナを頬張るゴリラに変わって舞桜が説明する。
「彼女はゴリ子さんだ。歳は定かではないのだが、群れの中では一番の美人だっ――」
「ちょっと待てーッ!」
部屋のふすまを開けて飛び込んできた謎の人影。
あっ、ゴリラに初キッスを奪われ、童貞まで喪失しそうになったハルキ君だ(棒読み)。
「ゴリラなんかに生徒会できるわけないだろ、オレ様が正式な生徒会役員だろバーカ!」
ハルキに集まっていた視線が一気に伏せられた。
舞桜が一つ咳払いをした。
「コホン、さて、それでは今日の議題を発表する」
「てめぇらムシすんなよ!」
喚くハルキを完全無視。
舞桜は話を進める。
「学園に必要不可欠なモノがこの学園にはまだない。そう、部活だ!」
「おい、ムシすんなって言ってんだろ、バーカバーカバーカ!」
「有名校には優秀な部活がある。本校も部活動に力を入れ、世界征服の礎にしたいと思っている」
「バーカバーカ、世界征服なんて子供っぽいこと言ってんじゃねーよ。男のロマンは正義のヒーローだろ!」
「まずは生徒諸君に新設したい部活のアンケートを取ろうと思う、意義がある者は?」
「ハイハイハイ、ハ〜イ! オレ様の意義を聞けぇ〜ッ!」
「では、ないようなので細かい仕事は事務に任せよう」
「いい加減にしろよ舞桜!」
ついにプッツンしたハルキが舞桜に飛びかかろうとしたのだが――眉間に切っ先。刀を握っているのはもちろん舞桜。しかもハルキと目線を合わせない徹底したシカト。
凍り付くハルキ。
「…………(落ち着けオレ様、動かなければ死なない。ゆっくりゆっくり後ろに下がれば……)」
ツーッと眉間から一筋の血が垂れた。
作品名:まおー転生 作家名:秋月あきら(秋月瑛)