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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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まおー転生

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 本当に菊乃が夏希を殺すかどうかは別として(殺しそうだけど)、そろそろ生徒会選挙の枠を越えて、止めに入ったほうがいいんじゃないかって展開だ。
 夏希はじっとりと汗を掻いていた。
「(まさか本当に殺さないよね、魅神さん?)」
「殺すわよ」
 即答だった。
 やっぱり殺すんだ、殺しちゃうんだ。日本の刑法なんて軽くムシして、ヤっちゃうんだ!
 ただ、残念なことに海上都市アトランティスは治外法権でしたぁー。
 さらに言ってしまえば――。
「短刀は脅しよ。刃物があると恐怖心が高まって楽しいでしょう」
 と、菊乃が囁き、夏希がほっとしたのもつかの間だった。
「殺すときはわたしの家畜にやらせるわ。刃物で切られるより苦しんで死ねるから」
 家畜とは〈影〉のこと。
 日本の法律では超常現象の類は『ない』ことになっているので、もしも犯人(菊乃)を引き渡して日本で裁判をしても、おそらく殺人を立証するのは非常に困難だろう。
 菊乃は戦意を喪失させている舞桜に顔を向けた。
「あなたの弱点はこの女。大切なのでしょう、この雌豚が!」
「(あたし別に太ってない!)」」
 そこ違うし!
 別にツッコミ入れるところじゃないし!
 風に吹かれながら舞桜は、ただそこに立っていた。
「夏希を失うなら、私はほかのモノすべてを捨てることができる」
「あたしのことそこまで……」
 キス魔のナンパ師だった舞桜が、夏希の中で少しずつ変わりはじめていた。
 舞桜の瞳は穏やかに、どこまでも澄んだ色をしていた。
 が、次の瞬間、舞桜のトンデモ発言が!
「まだ結婚初夜も迎えていないというのに、ここで夏希を失える筈がないではないか!」
 下半身の問題かッ!!
 夏希は怒りよりも先に妄想が駆け抜けてしまった。
「(女の子同士の初夜って[いやぁン♪]。わーっなに考えてんだろあたし! ダメ、考えちゃダメ、頭ん中ピンク色だと思われるぅ〜……ピンク……ピンク? そうだ、ピンクさん、天道さんだけじゃなくてあたしも助けて!)」
 しかし、なにも起きなかった。
「(助けてよ!)」
 ……しかし、なにも起きなかった。
「助けてってば!」
 …………やっぱり、なにも起きなかった。
 時間だけが過ぎ去っていく。
 舞桜は微動だにしない、視線の先の狐面を見つめたまま――。
 菊乃もまた、短刀を夏希に突き付けたまま人形のように止まっている。