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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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まおー転生

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「えっ……!(あたし口に出してた?)」
 夏希は声に出してはいなかった。偶然だろうか?
 不思議な顔をして考え込む夏希の隣では、舞桜は不思議な顔をして考え込んでいた。
「理解できない。面を取り上げたという行為を窃盗行為として見られ、君は私に敵意を向けているのか?」
「違うわ。素顔を見られ、接吻をされたことが恥辱なのよ!」
「君の言っていることは理解に苦しむ。顔を隠す女性がいれば見たいと思うのが当然、さらに美しければ愛を表現することは当たり前の行為ではないのか?」
「わたしが美しいだなんて嘘。わたしは醜い、この世でもっとも醜いのよっ!」
 菊乃から放たれた黒い風が叫び声をあげながら舞桜を呑み込まんとした。
 それがなにか、考える間もなかった。
 黒い風は一瞬にして掻き消されてしまったのだ。
 菊乃は驚愕した。
「(気配がした……ここには三人しかいない筈。周りの人間どもの雑音で〈声〉が聴こえないの?)」
 ゴール付近に集まっている聴衆。先ほどまではレースの行方を見守っていたが、菊乃が放った超自然現象を目の当たりにしてざわついている。
 〈声〉とはなにか?
 菊乃は声を殺して静かに尋ねる。
「どうやってわたしの攻撃を防いだの?」
「さて、生まれたときから私はどうやら奇跡の力に守られているらしい。魔王としての潜在能力が覚醒したのだろう」
 おかしなキーワードが出てきて夏希は『は?』とした。
「マオウって言ったの? それともマオって言ったの?」
「魔王と言ったのだ。私は古の魔王の生まれ変わり。以前の記憶や力は失われてしまったが、心がそうだと言っている」
「(この人、変なだけじゃなくて、頭もおかしい人だ。きっと奇跡の力なんかじゃなくて、ピンクさんが守ってくれたんだと思うけど)」
 すぐに夏希は背筋をゾッとさせた。狐面が夏希を見つめるように顔を向けていたのだ。
「ピンクさん? やはりこの場に見えない誰かがいるのね」
 菊乃の発言に夏希は度肝を抜かれた。
「……ウソ!?(間違い、あたしの心の声が聞こえてる!)」
 それは確信だった。
 急に恐ろしくなった夏希は舞桜の後ろに隠れた。
 夏希の急な態度に舞桜が尋ねる。
「どうしたのだ夏希?」
「ううん、大丈夫(スパゲティスパゲティスパゲティスパゲティ……ナポリタン!)」
 大丈夫と言いつつも頭の中では意不明な呪文を唱えていた。