まおー転生
それを見た夏希は信じられないながらも、その言葉を口にしていた。
「魔法?」
炎の勢いはまだ治まったわけではない。
舞桜が夏希を抱きかかえた。
「奇跡が起きたようだ。行くぞ夏希!」
ぐずぐずしていると再び炎が勢いを増して逃げ道を塞ぐ。
しかし、夏希はそんなことより、ピンクウサギと超自然現象の因果関係が気がかりだった。
気付けばピンクウサギは姿を消している。
「天道さん見たよね、今見たでしょ! ピンクのウサギが炎を消したんだよね!?」
「ん……何を言っているのだ? まあいい、とにかく抜けるぞ!」
舞桜は夏希を抱えたまま全速力で炎に左右を囲まれた道を抜けた。
抜けてもまだ炎は後ろから追ってくる。気を抜かず舞桜は安全な場所まで夏希を抱えたまま走った。
しばらく走り続けていると、上空からプロペラ音が聞こえた。空を見上げると木々の隙間から飛行機が見えた。
「ふむ、消火部隊が到着したようだ。じきに火災も治まるだろう」
冷静な声音で舞桜は呟いた。さっきまで炎の中にいたとは思えない。しかも、ピンクウサギが超自然現象を起こしたというのに、まったく驚きもしていないのだ。
夏希は不思議な顔をしながら舞桜に尋ねる。
「天道さんの知り合いなの……あのピンクのウサギ?」
「さっきもそんなこと言っていたな。ピンクのウサギとは何のことだ?」
「えっ……(あたしのことからかってる? それともとぼけてる?)」
炎に囲まれたとき、ピンクウサギは絶対に舞桜の目にも入る場所に立っていた。そして、なんだかわかんない超自然現象を巻き起こしたのだ。
夏希は怪訝な顔をしながらも、すぐに首を横に振って取り直した。
「ううん、なんでもないの気にしないで(触れちゃいけない話題なのかな。でもあのピンクさん何者なんだろう……すごくカッコイイ声してたような気がするけど、もしかしたらすごい美少年が入ってるのかも!)」
「……何をにやけているのだ?」
「……っなにも、別に!」
夏希は顔の前で手をバタバタさせて真っ赤な頬とにやけた口元を隠そうとした。
不自然な行動をする夏希に舞桜は不思議そうな視線を向けていた。
「炎の暑さで頭が可笑しくなったのか?」
「ぜんぜん平気、ぜんぜん元気。あのぉ〜、そろそろ下ろしてくれない? 自分で歩けるから」
まだ夏希は舞桜にだっこされたままだった。
作品名:まおー転生 作家名:秋月あきら(秋月瑛)