まおー転生
という高らかな雄叫びを残して……。
呆気にとられる夏希。
「なに……今の?(映画の撮影所に迷い込んじゃったのかな、あはは)」
舞桜は冷静な顔をしながら呟く。
「まだまだ修行が足りないな(足が痛むといえど、勝負にははじめから平等などありえないのだから)」
そして、ハルキはというと、
「あーははははっ、どうだ参ったかオレ様の実力にひれ伏すがいい!」
地面で気絶するナントカ族を足で踏んづけていた。恥ずかしげもなく自分の手柄にする性格がスゴイ。
さらにハルキは舞桜たちを置いてさっさと先を進もうとしていた。
「じゃ、お先に!」
なんて言って走り出した矢先だった。
「ぎやぁ〜ッ!」
デジャブーというか、聞き覚えのある叫び声というか。
夏希が視線を向けると、なんだか知らないけど、ハルキが宙吊りになっていた。
「え……なに?(なにあの変なのっ!)」
急に眼を丸くして夏希は現実を目の当たりにした。
地面から伸びる縄のような触手が蠢いている。それも何本も何本も、意思を持ってハルキを拘束していた。
夏希は恐怖心より先立って、足が前へと駆けだしていた。
「今助けるから!」
「よせ夏希!」
舞桜が止めようとしたが、すでに遅かった。
夏希の足首に触手が巻き付いた。
「きゃっ!」
宙吊りにされる夏希。しかも逆さ吊り。慌ててスカートを押さえてパンツを隠す。
触手の皮膚からは粘液が噴出し、這うようにして夏希の体を締め上げる。
それほど夏希の胸は大きくないが、締め上げることによってバストアップ効果がもたらされた。巨乳のねーちゃんじゃないことが悔やまれる。嗚呼、本当に残念だ。
それでも触手と美少女の取り合わせといったらエロの殿堂。
触手は夏希のふとももを這って……。
「イヤーッ!」
自主規制が入る寸前、槍を構えた舞桜が華麗に舞った。
槍の残像が次々と触手を突き刺し、斬り刻み、紫色の汁を飛ばしながら暴れ回る触手は夏希を解放した。
地面に落ちる夏希を受け止め、お姫様だっこする舞桜。
「大丈夫か夏希?」
涙目の夏希は無言のまま頷いた。
舞桜は小さく微笑んだ。
「夏希は強いな……」
ゆっくりと夏希の体を地面に下ろし、『後ろに下がっていろ』と目で合図してから、舞桜は再び槍を構えた。
触手は敵を剥き出しにして舞桜に襲いかかろうと蠢いている。
作品名:まおー転生 作家名:秋月あきら(秋月瑛)