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赤い瞳で悪魔は笑う(仮題) ep2.姉妹

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 翌日。
 つまりそれは、俺が退院した日から数えて二日目であり、咲屋灰良と久しぶりに会った次の日であり、また、咲屋灰良の姉と名乗る通り魔と遭遇した、翌日ということである。
 退院した――それは良い。
 咲屋灰良と久しぶりに会った――それも、別に良い。
 咲屋朱露と名乗る通り魔と遭遇した――これは、良くない。
 しかも更に悪いことに、俺は彼女から脅しをかけられている。あのアクマは、俺がいくら死んでも蘇生してくれると言っていたが……『気分次第』だと、語尾につけるのを忘れなかった。まったく、落ち着かない気分にさせてくれる。
 あの後。
 あの後俺たちは、地下鉄の駅で別れた。紅也曰く、自分は眠る必要もどこかに帰る必要も無いため、今晩は朱露を探すことにする、だそうだ。恐らく徹夜してあちこちうろついていたのに違いない。悪魔の心配など、するつもりなどないが……ただ、女子と間違われて変な奴にからまれでもしたらどうするんだろう。ちょっと想像してみて、ぞっとした。からんだ奴の方がひどい目にあわされるのに決まっている。
「こら。何勝手なことを想像しているんだい」
 急に後ろから襟を引っ張られ、俺は危なく地下鉄のホームから続く階段を、転げ落ちるところだった。
――……っ。危ないだろ、このアクマが。
「ふん。馬鹿なことを考えているからさ」
 そう言いつつ、でも楽しそうな笑顔で、紅也は言った。……にしても、神出鬼没な奴。
「当たり前でしょ、アクマなんだから」
 俺の傍に並んで、歩くつもりらしい。俺はクラスメートに見つかることを恐れ、若干壁寄りに移動。……ってか、ついて来るし。
「さて。……それで君は、どうしてこんな所にいるのかな?」
――どうしても何も……。ただの買い物だよ。
「ふうん?」
 面白いものでも見るかのような目つき。……何だか不快だ。
「こんな駅から、どこへ買い物に行くつもり」
――…………。
「まさかわざわざこんな所のコンビニにでも用事がある訳じゃないよね。それとも何かな……大黒不動産に用事? 引越しでもするの?」
――……むう……。
「他にこの町で店らしい店と言えば……、ああ、有名なたこ焼き屋があったね!」
――あー……。もう、分かったよ。
「ん?」
――分かりました。嘘言ってすみませんでした。俺がこの町に来たのには、他に理由がありました!
 降参するように両手を上げて、俺は仕方なく白状する。
「で、それは?」
――どうせもう分かってるんだろ。
「全然。言ってくれなきゃ分からないな」
 紅也は楽しそうに目を細めている。
――……ちっ。はいはい、言えば良いんだろ。……早倉井医院に行こうと思ったんだよ。
「ふむ。それは奇遇だね。早倉井医院は、僕がこれから向かおうと思っていた場所だ」
――…………。
 どうせそんなこったろうと思っていたさ。あーあ、今日は一日、紅也から離れて過ごせると思ったんだがなあ。
「またまた。僕に会えて嬉しいんでしょ?」
 くくくと笑う紅也に、俺はうんざりした眼差しでもって答える。だが――、紅也の言い分を百パーセント否定出来るわけではないのが、我ながら哀れだった。