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赤い瞳で悪魔は笑う(仮題) ep2.姉妹

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「そう、そうだね。私はね、君に用があって来たんだよ」
 朱露は、再び俺を見る。いや、その視線で、俺を射抜く、貫く、縛る、締める、突き刺す、……殺す。憎しみ、殺意。単純に、相手を憎いと思う、殺したいと思う、そういう意識。
 それが、彼女にはあった。
 それが、俺に向けられた。
 まるで刃物のような。まるでナイフのような。そんな、赤茶色の眼が、俺を睨み付けている。
「更衣雨夜……もうこれ以上、私の妹に近付くな」
 視線で俺をがんじがらめにしたまま、朱露は低い、よく通る透き通った声でそう言った。
「あの娘には、あんたみたいな存在は必要ない。邪魔なんだよ、雨夜君」
――…………。
「だから。もうこれ以上、咲屋灰良には近付くな」
「『命が惜しければ』? ……ふん。どうして朱露さん、君はそこまで彼女に雨夜君を近づけさせたくないのかな。理由を言ってもらえれば、もっと納得できると……」
「うるさいっ!」
 朱露は――……その眼を吊り上げて、怒鳴った。
「最初で最後の忠告だよ。もうあの娘には、近付かないで」
「…………朱露さん」
「何?」
 視線を少しも和らげることなく、朱露は紅也を見る。
「君はどうして、彼女を独りぼっちにしておくの?」
 トドメだった。
 紅也のその言葉は、彼女――朱露にとって、どこまでも紛れもなく確かに、致命傷そのものとも言える、破壊的なトドメの矢だった。
「…………っ」
 朱露は無言で。一言も発することが出来ないように、押し黙って。
 そして最後にもう一度、紅也を見、――俺を見た。憎悪、嫌悪、そして怒気。
 見られたこちらが哀しくなるほど、彼女の視線には負の感情が渦を巻いていた。
――…………。
 咲屋灰良にこれ以上。
 これ以上、近寄るな。関わるな。そうしないと――……。

――……あ、れ?
 気付いた時には、朱露は消えてしまっていた。
「ちっ……。逃げ足が速い上に、途中で気配を絶たれたか……。くそ、どうしてそんなことが」
 紅也は舌打ちをして、悔しそうに唇を噛んだ。
 とっくに辺りは暗くなっている。街灯が、ちらほらと灯り始める。
――これ以上近付くな、か。
 呟くと、紅也はくくく、と笑い。
「近付いたら、一体どうする気なんだろうね? 君の咽喉を、掻っ切るつもりなのかな?」
 楽しそうに、そんな物騒なことを言う。
――なあ、紅也? ……あの時、俺の首に当たってたアレは……。
 本物じゃないよな、と言おうとすると。
「そう、勿論本物だったよ。どうなるか見ものだから見ててやろうと思ったんだけど……どうにも、ならなかったね」
 少しだけ、残念そうに。紅也は言い、俺は今更ながら背筋が凍った。