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赤い瞳で悪魔は笑う(仮題) ep2.姉妹

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「な、何で……じゃなくて、大変なの! 更衣君」
 少しの間呆然と突っ立っていた俺たちだったが、いち早く気を取り直して言葉を発したのは、咲屋だった。
「この女の人、……お腹から、血が……!」
「血!?」
 俺より早くそのフレーズに反応した紅也は、俺を押しのけて、うずくまる女性の元へ駆け寄る。女性は何かを抱えるようにうずくまり、浅い呼吸を繰り返している。顔は青ざめていて、さっき大きく見開かれていた目も、今はすでに閉じられてしまっている。
「私……携帯、今持ってなくて……だから、更衣君……」
――ああ、分った。
 俺は携帯電話で、119番にダイヤルする。手短に女性の状態と番地を告げ、切る。
「刃物で刺されたみたいだね……」
 紅也は女性を支えるように隣にしゃがんで、冷静に言う。……通り魔、なのか?
「……って、あれ? 葉暮……紅也、君?」
 咲屋は、今始めて気がついたとでも言うように、そんなことを言う。紅也はにっこり笑って、そうだよ、と肯く。
「あれ……? 二人って、仲良かったの?」
 きょとん、と首をかしげる咲屋。まあ、無理もあるまい。何せ俺と紅也は、学校内でまともに話したのはたったの十五分。あとは全て、俺の入院中、病院内でのコミュニケーションしかとっていないのだから。まだ、付き合いは半年にも満たない。それに――……。
「うん。僕と雨夜君は、『親友』だよ。深くてながーい付き合いなんだよ。ね、雨夜君?」
 この嘘つき悪魔めが。どの口でそんなコトを言う。
 にらみつけたが暖簾に腕押し、豆腐にかすがい。全く、効果はない。
「へえ……そうだったんだ」
 俺も初耳の紅也の発言に咲屋は納得したらしく、俺と紅也を見比べる。
――いや、咲屋、違う。俺は、こいつとは断じて仲良くなんか……
 俺の空しい弁解は、すぐ近くまで来た救急車のサイレンにかき消された。
「あ、救急車!」
 咲屋は車道をこちらに向かって来る救急車に向かって、手を振る。救急車はすぐに停車し、担架を運び出す。……やれやれ。これで一安心、か。
 ため息をついて、紅也を見る。
――って。……え? 紅也……サン?
 紅也は、まだ何かが引っかかっているように、去って行く救急車を、睨み付けていた。――その、真紅の瞳で。その、ぞっとするくらい紅くて綺麗な、ガラス玉のような瞳で。
――…………。
 やれやれ。
 まだコトは、終わっていないようだ。