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赤い瞳で悪魔は笑う(仮題) ep2.姉妹

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「まあ、そういう理由で、今回の通り魔にも興味があったというわけ」
――ああ、分った。でも……、どうするんだ? 通り魔って、どこかに集中的に現れたりとかするのか?
 通り魔を退治するとしても、肝心の『それ』本人に会ってみないことには始まらない。そう思って聞くと、紅也は「ああ、それね」と肯く。
「微かではあるけれど……気配を辿っていけば、必ず遭遇するはず」
――遭遇、って……。
 あまりに不確かな言い方に、俺は不安を覚える。紅也は、大丈夫だって、とヒラヒラと手を振る。
「『天使』は僕らの敵だからね。敵の動向ぐらい察知でき――……」
――紅也?
 紅也は急に言葉を切り、笑みを消す。真紅の瞳は、睨み付けるかのように、俺の背後を見据えている。
――あの〜、紅也、さん? 大丈夫ですか?
「…………」
 紅也はそのきつすぎる、鋭すぎる目線を、少しも緩めることなく……
 今まで無表情だったその唇を――歪めるように。
 片方だけ吊り上げて。
 皮肉げな……真っ当な神経の持ち主が見れば、自然と嫌悪感を抱いてしまいそうな。
 そんな、いやらしい笑みを浮かべた。
「……雨夜君」
――あ?
「どうやら、探すまでもないようだよ。……この近くに、いる」
――え……。
 紅也の豹変っぷりに驚いていた俺は、その言葉にまたも驚く。
 通り魔が、近くにいる。
 ここは、いつの間にか街路樹のある通りを抜けた、狭い通路――家と家の、ちょっとした隙間のような、そんな通路である。こんな所で、襲われでもしたら。
――とりあえず、ここを抜けて……
 俺がそう、言いかけた時だった。
「きゃあああああ……!」
 と。
 唐突に、叫び声が。
 俺の背後の通路の先から、響き渡ってきた。……何だ? まさか――……。
「急ぐよ、雨夜君!」
――……ああ!
 紅也と俺は、狭い路地を一気に駆け抜ける。薄暗かった場所からいきなり開けた場所に来たため、一瞬目が眩む。……ああ、誰かが、いる。
 誰が――……。
 光に目が慣れ、そこに立っている一人の少女と、うずくまる一人の女性が、見えてくる。
「雨夜君、何ぼーっとしてるの! 走って!」
 思わず立ち止まっていると、追いついてきた紅也がそう急かし、俺を追い抜いていく。俺も慌てて紅也に続き、すぐに、その二人の所までたどり着く。
「…………!」
 先に、うずくまっていた女性のほうが、俺たちに気付き、目を見開く。口をぱくぱくと開け閉めしている。まるで酸欠の金魚だ。
――…………。
 よくよく見ると、うずくまってこちらを見ている女性は、ただうずくまっているのではないようだ。両手で腹部を押さえている――……怪我、を? まさか……。
「…………?」
 その時。
 尚もその二人に近付く俺たちのほうに、少女が気がつき、顔を向けた。
 少女が。こちらを向いた。
 そして――……
「……なっ……」
――え……。
 俺と少女は同時にそう呟いて、驚愕した。
「な……んで……」
 少女は、ふっと二、三度瞬きをした。そして、俺をもう一度、確認するように。
 咲屋灰良は――……
「更衣君……?」とだけ、言った。