男子校読書倶楽部
Episode.1 導かれしは宝の扉
茶と、蜜柑と、海と富士山と、恵まれた緑、水が点在する、ここ静岡は、なんとも地形や食、環境に恵まれた地であった。勿論隅々までの全てがそれで成り立ってるとは限らないが、しかし地元の人間にとってはそれは極々普通で、そして私生活ではなんとも着目しにくい所であった。
そんな静岡の、ある平凡な男子校に通う一人の少年、藤浪 祢(フジナミ ナイ)は買ったばかりのipotを片耳にぶら下げ、本体はYシャツのポケットへと忍ばせ、誰もいなくなった教室の窓辺から小さな人影達が動き回る運動場をボンヤリと眺めていたのであった。
小さな機械から発せられ耳に届くであろう音楽は、彼が最近ハマった本で、ドラマ化された主題歌であった。音楽事態、家では親のお古で貰ったものでクラシックやらPOPSやら友人から借りたアニメソングなど様々なものを聞くが、今ipotに入っているものはその一曲だけであった。
そうなると彼は何分だか、何時間だか分からない時間の間、片耳に発せられる唯三、四分である一曲の曲を延々とリピートし聴いていた状態となる。
しかし彼は其のことには全く頓着していない様子であり、寧ろ好んでその曲を聞き入っていたわけでもましては意識をそそられるものでもなかったらしい。
そんな状態がいつまで続くのであろうかと思いきや、彼は当分働いてなかったであろう、四肢をぎこちなく動かし大きく背伸びをし始めた。
漸く行動を開始しようかと見える様子かと思えば、その顔はなんとも眠そうでさっぱりとしない表情であったのだった。