朧木君の非日常生活(13)
そう、座敷ちゃんのお墓。
大きな石に一本の真っ白な櫛が備えているだけだけど。
けど、お墓を照らす夕日があるからいいじゃないか。
けど、お墓を守るように海が広がっているからいいじゃないか。
あの後、蜻蛉さんと俺は、この夕日と海がよく見える山の一角に、座敷ちゃんのお墓を作った。
蜻蛉さんがまだ鎌鼬村にいた頃、よく二人でこの景色を見ていたらしい。
黄昏に染まる太陽と、茜色に染まる海。
よく考えれば、蜻蛉さんが鎌鼬村にいた頃は少年時代だ。
そして、座敷ちゃんは歳を取っていないだろう。
もしかしたら、二人は恋仲とかだったのかもしれない。
この景色を二人で仲良く将来について話していたのかもしれない。
蜻蛉さんからは、何も聞いてないから分からないけど。
作品名:朧木君の非日常生活(13) 作家名:たし