朧木君の非日常生活(13)
「懐かしいな、朧木くん」
蜻蛉さんの表情はどこか物憂げで、哀愁が漂っていた。
「お線香・・・・・・あげようか」
俺たちは鞄からお線香を取り出し、火を付け、大きな石の前に供えた。
訪れる沈黙。
多分、鬼火ちゃんも俺たちに習って黙祷を捧げているんだろう。
蜻蛉さんは何を思っているんだろう。
・・・・・・愚問か。
決まっているじゃないか、蜻蛉さんが何を思っているかなんて。
思いは色褪せようとも、想いは色褪せやしないんだから。
変わりゆく気持ちもあれば、変わらない気持ちだってある。
そう、蜻蛉さんはこう想っているに違いない。
作品名:朧木君の非日常生活(13) 作家名:たし