左手ピース
「もしかして松橋優美さんの弟な」
「そうっすよ!姉貴と同じクラスなんすよね?」
「え、まあ……」
こいつは話を最後まで聞かない奴らしい。というか、もう、何も考えたくなかった。アウストラロピテクスがどうのこうのとか、トマトはどういった遺伝子を持っていればより美味しくなるのだろうか、黒柳哲子は何歳なのだろうかだとか、今は何も考えたくなかった。
でも、考えなければ。もしかしたらこれは何かのドッキリなのではないだろうか。そうだ、罰ゲームかもしれない!
「なあ、これってなんかの罰ゲーム?」
そうであってほしいことを願いながら聞いてみたが、こいつは傷ついた顔をして「違いますよ」とだけ答えた。
そんなに傷ついた顔をしないでくれよ。
でも、オレにはどうしたらいいか分からなかった。