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左手ピース

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02.脳内はいっぱいでして。




 決論から言おう。あの美少女とは幸運なことに同じクラスだったのだ! ありがとうございます、神様!!

 幼稚園以来の恋、そして一目惚れというフィルターのせいもあってかオレの目には、彼女の茶色みがかかったふんわりとした腰まである長い艶々の髪、フランス人形のような顔立ちに白い肌と長いまつげに少し垂れ目気味の大きな潤んだ瞳、すらっとした体つきに美しい形をした脚のすべてが常時輝いているように見えた。少しは省エネでもしたらどうだろうかと提案したいくらいに。話しかける勇気などオレにはこれっぽちもないのだが。


 彼女が教室に入るや否やクラスメイトはざわつき始め、彼らのさまざまな視線は彼女一点に注がれた。
 緊張気味の笑顔と共に簡単な挨拶を始めた。この笑顔にこれから一体何人の奴らがオレと同じように魅了されてしまうのだろうか。うーむ。想像もつかない。


「初めまして。今日からここで勉強をすることになった松橋優美です。よろしくお願いします」


 マツハシさんの親御さん、ブラボー! 優しく美しい女性でも、優雅で美しい女性でもなんとでも当てはまってしまう彼女には心から感心した。

 オレの名前なんて鈴木浩太というまあ、ドラマで言ったら友人Aとでも表せてしまうような名前だ。あ、全国の鈴木浩太さん、すみませんでした。
 でもしょうがないよな。全国で二番目に多い名字だもん。それにオレはオレでぱっとしない奴だと客観的に見てもそう思う。主人公には向かないタイプとでも言おうか。


 彼女の声は想像通りの、いや、想像以上の可愛さだった。可憐ではあるが芯のある声。
 完全にオレの脳内は彼女で埋め尽くされてしまった。


 まあ、残念なことにマンガのように「マツハシさんの机はスズキくんの隣ね」という展開にはならなかったのだが。


 ヤマグチ、頼むよ。

作品名:左手ピース 作家名:ぼんぼ屋