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日向に降る雪

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 ……全く、何を阿呆なことをやっているのか。部屋の真ん中で割れたDVDを抱きしめている男の図というのは、気色の悪いことだ。はぁ……。このため息は全ての諦めに相当するため息である。仕方あるまい。確かに、この件に関しては私の不注意がいけなかった。あの時、私が身を呈してでも彼女を守っていればこんなことにはならなかったのだ。
 そもそも私の自宅に先輩が尋ねて来た時点で何かおかしいと気づくべきだったのだ。先輩の狙いは“次元移転装置”だったことは間違いない。「早坂が研究室にいないのだが、ここに来ていないか」などと電話で聞けば済むようなことについて、友人を連れ立ってわざわざ尋ねに来るような時点でおかしいと気づくべきだった。ついでとはいえ彼女を盗んだことだって、早坂に対する嫌がらせ以外に考えられない。しかし、だ。できるだけ穏便に済ませようとした私も私だが、無理やり部屋に押し込んできた相手の方が悪いだろうとは思う。1対複数で、元々腕力に自信のない私に勝ち目があるはずないではないか!
 遠く早坂に言い訳をまくし立ててからポケットに手をつっこんだ。財布を開くと、ちらりと札が見える。出費としてはなかなかに痛いが、早坂のおかげで雪村さんと親しくなれた、という恩もある。これくらいは目を瞑ろう。
 早坂よ――。
 彼女の代わりなどこの世には存在しないのかもしれないが、すまない。瓜二つの別の彼女で我慢してくれ。今の私にはこれ以上の妙案は浮かばないのだ。
作品名:日向に降る雪 作家名:彩月空