バスルームの楽園
「あー木下、磯谷お前と選択科目大体一緒なんだわ。頼んだぞー。」
なんともまあありがちな展開である。この教師は協調性のこの字もない私に、転校生の面倒を見ろというのだ。
ふと前を見れば、教科書やら古語辞典やらを抱えている磯谷しぶきの姿。こうやって改めて近くで見ると、磯谷しぶきはとてもキレイなオンナノコだった。真っ白で、がりがりに痩せていて、しかしどこか強さを持っているようにじっと私を見つめている瞳がとても印象的だった。
「、行きましょうか」「・・・・・・。」
目線はそのまま、こくんと頷いて私たちは並んで歩き始める。磯谷しぶきはずるずると上履きを引きずりながら廊下を歩く。そんな私たちを見て、廊下を歩く何人かはこそこそと何やら囁きあっている。きっと、この学校じゃ新しいことなんて何もないから、動物園にやってきた真っ白なライオン、もとい美少女転校生にみんな興味津々なのだろう。一緒に歩く私からしたら、実に面倒で苦手な視線だ。磯谷しぶきはそれに気付いているのかいないのか、ただ前だけを見てずるずる廊下を歩き続ける。