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仁科 カンヂ
仁科 カンヂ
novelistID. 12248
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天上万華鏡 ~地獄編~

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 マシューはそう叫ぶと、マシューの目の前の床からゆっくりと、一組の男女が現れた。
「お呼びですか? 閣下」
 跪くこの男の名は、ジョン・スターン。タキシードを品よく着こなし、背は高く、きめの細かい金髪をなびかせている美少年である。
「本日も拷問を?」
 同じく跪くこの女の名は、メリー・フィリップス。純白のドレスに身を包み、ジョンとは対照的に背は低く、無邪気な笑みを浮かばせる幼女である。
 二人が召喚されたことを確認したマシューは、天使の側まで歩み寄ると、
「君は魔女か?」
 と問いかけた。天使はマシューの言葉を聞いていたが、恐怖に支配されている状態が続いているため、何も言葉を発する事ができなかった。
「ははははっ元天使に向かって、魔女か? だって? マシューさん。あなたも面白いことを言うねぇ」
 マシューのいう魔女とは、悪魔と契約をして神に背を向けた者という意味。神の使いである天使に向かっていう言葉ではない。これは天使にとって最大の屈辱である。しかし天使は何も答えない。
「屈辱に染まるその顔を見たかったが、この天使は腰抜けか? 怒りもわかぬとはね」
 カリグラの言葉に、大歓声。直前まで天使達から虫けらのように扱われてきた罪人達にとって、天使をいたぶることは、快感以外の何ものでもなかった。同時に、カリグラに従うことで、天使以上の立場でいることができる。そう考える罪人達にとって、この儀式はカリグラに対する忠誠心を高めるのに役立った。
「自らの罪を告白できないとはな。力ずくで吐かせてやろう。忠実な下僕共よ。この愚かな罪人をラックに!」
「ラック!」
「ラック!」
「ラック!」
「ラック!」
 罪人達の興奮は頂点に達した。それに対して、カリグラは不満そうな表情を浮かべていた。
「マシューさん。ラックとはまた面白味に欠ける。あまりにもスタンダードではないか?」
「陛下、ラックはラックでも少し趣向を凝らしております」
「ほう? じゃあその趣向とやらを見せてもらうよ」
 カリグラは、自ら歴史に残る拷問法を考案したほどの拷問・処刑マニアである。その者を満足させるのは容易なことじゃなかった。しかし、マシューは焦る様子を見せずに、作業を進めた。
「ジョン! メリー! ラックを」
「イエス、サー」
 ジョンとメリーは、木製の棒を空中より取り出すと、それをステッキのように持ち、地面に様々な呪文や図形がかかれた直径5メートル程の魔法円を描き始めた。
「卑しき罪人に罰を与えよ。ラック召喚!」
 ジョンが叫ぶと、2人が描いた魔法円が蒼色に光り輝き、ゆっくりとその魔法円からラックが現れた。
 ラックとは、木製で作られたベッドのようなもので、足を置く側には足を固定する足かせがあり、逆に頭を置く側には、手を上にもっていって固定する手かせがあった。手かせ側は、ハンドルがついており、そのハンドルを回すと、手かせが次第に上がっていく。つまり、ハンドルを回せば回すほど、体が引き延ばされる仕組みである。
「マシューさん。何の変哲もないラックじゃないか」
 何か特別な仕掛けがあると思っていたカリグラは、普通のラックと同じであることを確認すると、あからさまに不満な顔をした。
「陛下、いずれお分かりになります」
 マシューの言葉を聞いたカリグラはとりあえず、様子を見守ることにした。しかし今度期待を裏切ったら、マシューをどうしようか。密かにそう考えていた。カリグラの思惑に全く気付かないマシューは、危機感の欠片もない落ち着いた表情で作業を進めていた。
 ジョンとメリーは、天使を壺から取り出し、ラックに設置した。まずは、足が縛られ、固定された。その後、両腕を万歳をした形で固定された。
「さあ始めよ」
 マシューの声を聞いたジョンは、ハンドルをゆっくりと回すと、次第に天使の腕が引き延ばされていった。
 通常、拷問は、痛みや屈辱を与えることで、必要な情報を引き出すものである。既にマシューは天使に痛みを与えている。しかし、一向に質問をしようとしなかった。それどころか、ハンドルは更に回され、それに伴って、天使の体が引き延ばされてきた。
「ぎゃーーー!」
 という天使の叫び声と同時に
――――ボキボキボキ
 と肩の骨が折れ、筋肉が引き延ばされるような生々しい音が辺りに響いた。しかしジョンの動かすハンドルは止まらない。相変わらず一定の速さでハンドルは回され、それに伴って天使の体は引き延ばされていった。
――――ブチブチ……ボキ……ブチ
 筋肉や腱が千切れる音と、骨や関節が砕ける音が同時に聞こえる。天使は失神寸前で叫び声すら出せない状態である。
「これで終わりか?」
 穏やかな口調から一変したカリグラの言葉。マシューは流石に慌てた。
「陛下、今暫くお待ちを」
 冷たい視線をマシューに送るカリグラ。直後、期待を裏切られた際のマシューに対する拷問法をカリグラは考えていた。その刹那カリグラのほほは微妙に動き、その目は怪しい光を発していた。
 その鋭い視線を背に受けながら、マシューは明らかな殺意に背筋が凍った。
 失敗は許されない。
 先程までは、拷問が自由にできる喜びに満ちていたが、成功を義務づけられるプレッシャーで押し潰されそうになっていた。
「メリー! 第二段階に移れ!」
「イエス・サー」
 メリーは床に直径50センチほどの魔法円を描くと、そこから、ハンドルが付いた、円柱状の部品を召喚した。
「腸巻きローラーを設置せよ」
 メリーは腸巻きローラーが、天使の腹の上にくるようにした。
「腸巻きローラー? ということは、巻くんだね? マシューさん」
「お察しの通りです陛下。腸が巻き取られ、生々しく自らの眼前に突きつけられるのは何とも言えない屈辱でしょう。痛みも拷問に必要なエッセンスですが、屈辱も時には濃厚なスパイスになります」
「ほう。それは考えに及ばなかった。是非やってみたいものだ」
 カリグラが興味を示したことでマシューはとりあえずホッとした。
「メリー! 腹を割き、内臓を全て巻き取れ!」
「イエス・サー」
 まだジョンによる体を引き延ばすハンドルは止まってなかった。絶望的な痛みに耐えることを余儀なくされるばかりでなく、これよりメリーにより開腹されようとしていた。
「ぎゃーー!! あ……あ……あぁぁぁ!!」
 天使は、ラックの傷みに耐えながらも、迫り来る第二の拷問に恐怖を抱き、悲痛な叫び声をあげていた。
「マシューさん。腸を巻く前からこの調子だ。いいねぇ」
「陛下。ありがたきお言葉」
 二人の遣り取りをしている間、メリーは手早くメスで腹を割いた。すると勢いよく小腸が飛び出した。それを手に取ると、腸巻きローラーに固定した。メリーはマシューを見て、腸を巻くタイミングを計っていた。
「あ……あ……あぁぁぁ!!」
 これから起こる恐怖と屈辱に発狂寸前になる天使。それをマシューとカリグラは恍惚とした表情で見つめていた。
「陛下……ご質問を」
「そうだね。すっかり忘れるところだった。愉快だ」
 満足気に話すカリグラに、マシューは気分をよくした。
「元天使さん? 堕天使三田才蔵様を知っているか?」