天上万華鏡 ~地獄編~
「ハルに問う。これより貴様はどんな行動をとるか? 罪人を見捨ててマユの元に駆けつけるか? 来るはずのないマユをここで待つか? マユを見捨てて先に進むか? いずれにしても誰も救えない。どれをとっても誰かを見殺しにすることになるんだよ。それにマユの穢れた幻影が消えた今、十等兵達にどうやって立ち向かうんだ? 貴様にそんな力あるのか? 全て貴様の存在が招いた結果だ。貴様は存在そのものが悪なのだ。お願いだから早く消えてくれ」
「ああああああああああぁぁぁぁ!」
ハルの精神が音を立てて崩れていった。悲痛な叫び声をあげた後のハルは、人形のように生気を失った瞳のまま力なく倒れていった。ピクリとも動かなくなったハルの姿は、人ではなくモノだった。
罪人達は、必死に声をかけ、ハルを起こそうとしてが、一切反応しなくなった。ジャッジはハルの憐れな姿を満足そうに眺めると、
「罪人共。愚かな幻想に囚われていると、身を滅ぼすぞ。罪人は罪人らしく、自分の事だけを考えて行動するのが分相応というものだ。思いやりなんぞ君達に一番相応しくない言葉だろ? よく考えることだ」
そう言い残し、六芒星と共に消えていった。
作品名:天上万華鏡 ~地獄編~ 作家名:仁科 カンヂ