僕に神様は居ない
第一章 君は面白い人
「ねぇ。」
名前も知らない彼に話しかけてみた。
いつもは遠くで彼を見てるだけ。
まるで、奥手な女の子みたいだ。
「…えっ?」
彼は周りを見渡してる。
そりゃ、そうだ。
僕と彼とは初対面。正式には…だけどね。
僕は見てた。自分の部屋からいつも。
向かいの公園に皆でたむろしたり、遊んだり…
高校生にもなって…他に行くとこないのかよ…って、
一人で部屋から突っ込みいれてた。
あ…もちろん心の中で。
「君以外はいないよ。」
あ…言葉選び忘れた。
これはまずかったか…?
「あ…うん。そう…だよね…。」
あ〜…傷つけちゃった…。
どうしようかなー。
僕、人と普段話さないから良くわかんないんだよなー。
「なんか、…ご、ごめん。」
とりあえず、謝っとこう。
「えっ?あ、いや!ごめん。」
え…なんか、謝られた。どうしよう。
「え…」
「え?」
あ。やばい。おもしろい。
普段人と会話なんてしないから、
ちょっとしたことがツボにはまる。
「・・・っぷ」
もうだめだ…耐えれない。
「くっくっく・・・・あっはははは。おなか痛い。君やっぱり面白い!」
「えっ?」
あーやば。あっけに取られてる。
いや、でも笑いが…止まらん。
どうしよう。
「ちょっと・・・っくっくっく・・・まって…ふふふっ」
「あ…うん。」
なんで笑ってんだろとか思ってるんだろうな〜。
まー僕限定のツボってやつだよね。
うん。
あー。おさまってきた。
「悪い悪い。」
「え…あ、いや。何で笑ってたのかわかんないけど、楽しそうで良かった!」
うわー。満面の笑み…だめだ…また笑いが…
っと…このままだと話が進まなくなる。
一つ深呼吸しとこっと。
「…さてと。ごめんね。いきなり笑っちゃって!」
「いや、いいよ。なんか俺皆に避けられててさ、一人だったから―――」
「あー。知ってる。見てたから。」
ま、後々面倒だし。白状しとかないとね。
別にストーカーって訳じゃないし。
むしろ、日常風景だもんな・・・
「実はさ、僕あの家にすんでるんだよ。で、僕の部屋の窓からちょうど、此処見えるの。」
「えっ!?あの家の子?俺…この近所だけど、君の姿一度も見たことないんだけど…」
「君じゃなくて、瀬斗。海野瀬斗。」
「海野瀬斗?何その名前!!おもしろい!」
言うと思った。
「まー、せとって呼んで。君の名前は?見てたって言ったけど君の名前までは知らない。」
ほんと、ただ見てただけだからな。
「朝倉夕だよ。ゆうは夕方の夕。」
朝なのに夕方かよっ。
「へー。」
「あ!今、朝なのに夕方かよっ!って思っただろ!?」
読心術かよ…。こえーなぁー。
「あー。うん。まぁ、思うよね。そりゃー」
「だよなー。なんで朝なのに夕方なんて名前つけられたんだろ?俺にとっての謎なんだよね」
夕は楽しそうに話す。
僕には出来ない芸当。
だって、僕はそもそも『人』に慣れてない。
「夕。此処だと人目気になるから、僕の家行こうよ。周りのひそひそ声が正直うざい。」
「…ごめん。」
「夕が謝ることじゃない。謝らないといけないのはやってる方で、夕じゃない。」
そうだ。夕が謝る必要なんて無い。
悪いのは全てを奪った神様(やつ)だ。
この世界に居るやつら全員、
神様(やつ)に未来決められても気づいてないもんな。