アヤカシ模様
アヤメの導きのまま、夜道を進んでいくと茂みが独りでに揺れ始めた。急な音に透の肩が僅かにはねた。アヤメはじっとその揺れる茂みを見つめる。前に出ようとする透の肩をアヤメは持つ。
「大丈夫ですよ」
「え」
「お、やっと見つけた」
茂みから急に赤い頭がずぽりと現れた。赤い短い髪には出てくる際に絡まった葉っぱが数枚乗っていた。透はあっと声を上げる。
「貴方は」
「よ、坊主。やっぱりアヤメを知っていたな」
「ルビィ、どうしてこんなところに」
ルビィと呼ばれた青年はアヤメと顔見知りらしく、言葉を交わし始めた。透がびっくりして眼を瞬いている横で、ルビィは茂みを破壊して二人の前に立った。顎に手を置いて軽く唸る。
「元々はいろいろ用があったんだが、今は知らせようと思って」
ルビィは親指を背後に向けて道先を示す。
「客、来てるぜ」
「・・・そうですか」
アヤメはゆっくりと息を吐いた。
「人、苦手なんですけどね」
ぽつりとした呟きが、闇に落ちた。