凡人の非日常
「出来たよ、鈴木君。」
いい匂いとともに先生が来た。
先生も作ってきたのはオムライスだった。
俺と違ってとても美味しそうで、特性ソースがかかっていた。
「すごくおいしそう…。」
「さぁ、食べてみて！」
用意されているスプーンで食べる。
「おいしい。」
真面目においしかった。
「ホントに！？初めて料理を他人に振舞うからなんて思われるか不安だったんだよね。」
初めて料理を振舞う相手が俺って…。
深く考えないようにしよう。
何考えたって答えは一つしかないんだ。
何考えたって答えはもう出てるんだ。
俺は結構な具合で腹減っていたみたいですごい速さで食べ終えた。
「御馳走様でした。すごくおいしかったです。」
「いえいえ。そう言われると作った甲斐があったよ。」
その後、何もする事のなくなった俺たちはトランプをして遊んだ。
久しぶりにやると二人でも面白い。
いつの間にか時間は５時をまわっていた。
流石にもう帰んなきゃ失礼だよな…。
「俺、もう帰らさせてもらいます。」
俺はそう言いながら席を立った。
「そう？…わかった。」
玄関に向かい、靴を履いた。
「おじゃましました。」
「いえいえ。また買い物付き合ってね!!」
また、付き合わなきゃいけないのか…。
嫌だなぁとめんどいなぁとよくわからない喜びの渦の巻いた感情を引き連れながらドアを開ける。
「わぁ!!!ビックリしたぁ!!」
女性特有の高い声が聴こえた。
半分くらい開いたドアから声の主を見る。
美人。
ただその一言に尽きる女性が立っていた。
足が長い上に綺麗。
顔も小顔で目がパッチリ。
心の奥が悲鳴をあげる。
「あれ!?春子!!来るなら電話くらいしろよ。」
後ろから先生の声がした。
『彼女なんてもう１年くらいいない。』
先生の言った言葉がカラカラと崩れて胸の痛みへと変わる。
俺は全てを悟った。
あ、俺はここにいちゃいけないんだ。