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里海いなみ
里海いなみ
novelistID. 18142
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子供は大人に恋をする

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ごめんなさい


浅田さんがいなくなったおうちはとっても広くて寂しくなります。今はテレビの左上に出ている数字が8:30なので、浅田さんが帰ってくるまでまだまだずーっといっぱい時間があります。お掃除をするのはもうちょっと後にして、僕は浅田さんの匂いがするソファに飛び乗りました。ばふって大きな音がしてクッションを抱き締めると浅田さんの匂いと煙草の匂いがしました。僕はこの匂いが大好きです。
浅田さんの匂いがするソファで浅田さんの匂いがするクッションを抱き締めていると、まるで浅田さんにぎゅうーってされてるみたいで安心します。なんだか胸の辺りがきゅうってなってむずむずして、変な感じがします。だんだんそのむずむずが胸からお腹に下りてきて、おへその下辺りがじわって熱くなってきました。クッションを足で挟んでゴシゴシするみたいにお腹とかその下を擦るとなんだかじんじんしました。熱くてこそばくて、なんだか変な感じです。

「っん、あさ、ださぁ……ッ」

体がふわってなる感じがして、僕は思わず浅田さんの名前を呼びながらもっとクッションを押し付けました。

「ぁ、ふわって、なるぅ……!」

一瞬目の前が真っ白になって、体が痺れたみたいになりました。力が入らなくてクッションが床に落ちたけど拾えません。なんだかとっても気持ち良かったけれど、いけない事をした後みたいな気持ちになりました。浅田さんのクッションを使って、いけない事、です。僕はなんだかとてもドキドキして、お顔が熱くなって、胸がやっぱりきゅうーってなりました。いっぱい走った後みたいにはぁはぁなっちゃったけれど、嫌なはぁはぁじゃなかったので良かったです。

「お掃除、しなきゃ……」

ピンポーン、

「う?」

お部屋のお掃除をしようとソファから降りたら、ぴんぽんが聞こえました。お客さんや宅配便の人が来るよ、とは教えてもらってなかったのでびっくりしましたが、もしかしたら浅田さんが言い忘れてただけなのかもしれません。お客さんだったら浅田さんが困ってしまうかもしれないので、僕は玄関に向かって走りました。
スコープから外を覗くと、そこにはなんと、浅田さんが立っていました! 僕がびっくりしてじーっと見つめていると、またぴんぽんが鳴りました。

「浅田さんっ」

ドアを開けるとしゃがんだ浅田さんのお顔がすぐ近くにありました。思わず僕はぎゅうって抱きついてしまったけれど、浅田さんは怒ったりしませんでした。そして、にこにこ笑ってこう言いました。

「マコ、さっき何してたの?」

僕はなんの事だろうと思ったけれど、すぐにあのいけない事を思い出しました。浅田さんは僕が一人でお留守番している時に危ない事がないようにってカメラをつけているのを忘れていたのです。浅田さんのクッションでいけない事をしていた僕を浅田さんは見ているはずです。怒られると思ったら、僕はとっても悲しくなってきました。

「〜っ……あさ、だ、さん……っふえ、ごめん、なさ……っ、ぅ、く、ごめんなしゃ……っ」
「……どうしたのマコ、なんで泣くの?」

ぽろぽろ涙が出てくるのを僕は止められませんでした。浅田さんは怒ることもなく、困ったような表情で僕を抱き締めて背中を撫でてくれました。僕は悪い子なのに。そう考えるともっと悲しくなりました。

「浅田、さんの匂い、がして……っ、僕、さみ、しくて……っ」
「あぁ泣かないで、ちょっと意地悪したね。ごめんねマコ」

泣き止めない僕の頭を浅田さんは何度もよしよしって撫でてくれました。それから浅田さんは、今度は俺の前でしてね、って笑いました。怒られなかったので、あのいけない事は悪い事じゃないのかなと思いました。



浅田さんがちゅうしてくれたので、嬉しかったです。