小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

スタートライン (1)

INDEX|9ページ/16ページ|

次のページ前のページ
 

 しばらく道なりに真っ直ぐ南へ。昼間であれば見渡す限り緑の茶畑が広がっているのだが、夜ともなるとポツンポツンとお茶農家の家の明かりが灯っているだけで、ほとんど一面、ただの暗闇だ。高台にあるため、麓よりも暗さがより一層深く感じる。
 点滅信号を一つ、二つ、通り過ぎた。次の交差点が目的地への目印だ。交差点といっても、そこには外灯だけで信号はない。いわゆる農道と呼ばれる片道一車線の道だ。これだけ周囲に明かりが無いと、通り過ぎてしまう車もあるだろう。実のところ、曲がったとしても行き止まりなのだが。なぜ行き止まりかというと、普段はトラクターや農家の車両が通る道でしかないからだ。ゆっくりと交差点を右折し農道へ侵入する。しばらくするとアスファルトではない、舗装されていない砂利道へと変わる。さらに進み、突き当たりまで走るとT字路にぶつかる。そこに「秘密の場所」への最初で最後の案内板があるのだ。

『展望の庭・左折』

 手書きで書かれた小さな看板が、いかにもな雰囲気を漂わせていた。だが、それがいい。
 そういえば最近、市内の山奥にある無人の秘境駅が、ネットの噂から脚光をあびて観光客で溢れかえってしまっているそうだ。そうなってしまっては秘境駅でもなんでもなくなってしまう。それに比べてここは話題になるような場所でもないので、安心だ。地元の人にもめったに会った事がない。もちろん「秘密」なのだから、誰にも教えていない。

『内緒にするほどなの?』
「内緒だよ。ここは私にとっては秘密基地だもん」