朧木君の非日常生活(11)
「それはそうと朧木くん。一通り見て回ったけど、この民家には特に目ぼしい手掛かりは残されていないようだね。次の民家に行こうか」
「そうだね。そうしよう」
そう、俺達が今いるこの家は特段変った様子はなかった。
ごく一般的な民家だ。
でも逆にそれが、不気味だ。
そう・・・・・・ごく一般的な民家なのだから。
要するに、生活感があるのだ。
つい先日まで本当に人が住んでいたような痕跡が残されているのだから。
日用生活品、食材、衣服、等が残されていたのだから。
しかし、食料が腐っているとかは、ない。賞味期限は何年も前の年を表示しているのに、腐ってはない。
まるで、この『鎌鼬村』だけが過去に取り残されたかのように。
だから、不気味だ。
作品名:朧木君の非日常生活(11) 作家名:たし