朧木君の非日常生活(11)
━━何も、いない。
「か、蜻蛉さん・・・・・・今確かに物音がしたよね?」
けど、いない。
何もそれらしきものは見えない。
ただ、障子があって・・・・・・うっ。
・・・・・・まさか。
「そうだね、朧木くん。障子を開けてみようか、そりゃもう勢いよく。全開で全開にね」
ふざけるな。
ふざけるなよ。そんなの怖すぎるに決まっているだろ。
何かの物音がしたであろう、何かがあるのであろう、場所に自ら足を踏み入れるなんて。
「分かった、蜻蛉さん。俺は障子の中央から右側に開くから、蜻蛉さんは左側を開いてくれ」
「くくく、しょうがないな。朧木くん」
「せーの、で行くよ、蜻蛉さん」
そして俺は一回深呼吸を行い、言った。
「せーの!」
作品名:朧木君の非日常生活(11) 作家名:たし